夜行  森見登美彦著.jpg十年前、京都で学生時代を過ごした仲間6人が、鞍馬の火祭りを見に行く。そこで仲間の1人、長谷川さんが忽然と姿を消す。そして5人は10年ぶりに鞍馬の火祭りに集まり、1人ずつ旅先で出会った不思議な体験を語る。いずれも岸田道夫という画家の「夜行」という絵画に関係したものであった。舞台は「尾道」「奥飛騨」「津軽」「天竜峡」「京都・鞍馬」――。何が真実で、何が夢想なのか。不思議な異界が語られ、夜の闇の世界に引き込まれる。

私の学生時代の京都、とくに故郷の飯田線やその奥・天竜峡。きわめてよくわかる。人のほとんどいない暗い闇とポッと灯る光。たしかに人の一生、喧噪のなかの今の自分、人の幸せ等々を考えさせられる時空だった。長い夜、暗い静寂な世界、日常を脱した異次元の世界に引き込まれ、時空を超えた瞑想、夢、妄想の世界に入ることができる。無意識のなかに沈んだ末那識、阿羅耶識への旅を開示してくれている。


皇室がなくなる日.jpg「『生前退位』が突きつける皇位継承の危機」が副題。有識者会議のヒアリングでも発言している笠原氏。「日本人にとって皇室のもつ統合力はいつの時代にも不可欠である」「今日もなお、天皇や皇室は社会秩序の安定化に資する重要な役割を果たしている。・・・・・・いつ国家的危機が到来するかわからない。『日本国民統合の象徴』である天皇の存在意義はここにある。国家の存亡にかかわる天皇の統合力を軽視することはできない」「わが国の歴史上、天皇は政治的宗教的権威であり、政治権力を行使する政権を権威化し、その施政に正統性を付与することで、政治的コストを低減し政治秩序を安定化する役割を果たしてきた」「退位の制度化により憲法が定める象徴としての国民統合の機能が低下するおそれがある」「天皇の権威の二元化、二重権威、強制的退位、恣意的退位の懸念があり、統合力の著しい低下は免れない」「人心離叛した幕府の失政を批判した岩倉具視は『人心ノ収攬』を訴え、天皇、皇室の統合力に期待を寄せた」・・・・・・。

本書は歴史を俯瞰し、特に7世紀。皇極女帝、天智天皇、天武天皇、持統女帝、藤原不比等、乙巳の変、壬申の乱等を通じ、天皇制国家の成立と皇位継承を示している。そして次に、幕末から明治への激動のなかでの幕府と天皇を、孝明天皇、和宮降嫁、大政奉還、岩倉や大久保、王政復古、明治憲法体制と旧皇室典範を解説する。そして「皇統の危機に直面する現代の日本」として、象徴天皇制度と現行皇室典範、天皇の統合力・権威と皇統の意義等を語り、現状を剔抉する。


往復書簡.jpg中学・高校時代、ふとしたきっかけで"事件"が起きる。その関係者は心に傷を負い、ずっとそれを抱え引きずる。乗り越えられないが、自らを納得させて生きなければならない。「10年後の卒業文集」「20年後の宿題」「15年後の補習」の3話。いずれも手紙のやり取りが始まり、真相が見えてくるが、関係した1人1人のその時の思いと行動が、いかに微妙に食い違っていたかが明らかになっていく。心に迫る傑作。

「10年後の卒業文集」――。高校時代の元放送部の浩一と静香の結婚式で仲間が再会するが、浩一の恋人だった千秋が姿を見せない。千秋は仲間と登った地元の山で滑り落ち、顔に大けがを負って、音信不通だった。

「20年後の宿題」――。高校教師の敦史は小学校時代の恩師・竹沢真智子の依頼で、前任の学校での教え子6人の消息を聞きに行く。20年前、先生夫妻と6人はピクニックに行き、川に1人が流され、助けようとした先生の夫が溺れ死ぬという事件があった。

「15年後の補習」――。28歳になっている純一は、恋人の万里子に突然、国際ボランティアの一員として発展途上国に行くことを告げる。そして往復書簡が始まる。15年前、1人が焼死、1人が飛降り自殺という事件があり、それに関係していたのが純一と万里子だった。


ホウドウキョク③.PNG ホウドウキョク②.jpg

2月13日、春香クリスティーン「ホウドウキョク×GOGO」(フジテレビインターネットニュース専門チャンネル)に出演。約1時間にわたって「日米首脳会談の評価」「安全保障、二国間経済対話の行方」「訪日外国人増加 観光推進どうするか」「IR法案の意義」「憲法論議と公明党の加憲の立場」「公明党が夏の都議選を重視する理由」などについて質問に答えました。

※インターネット放送ですので、下記URLにてアーカイブ放送をご視聴いただけます。パソコン、スマートフォン等でご覧ください。

https://www.houdoukyoku.jp/archives/0008/chapters/27270


ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち上.jpgミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち下.jpg米国のベストセラー原作本が映画化され、日本でも今、上映。フロリダで生まれ育ったジェイコブを愛してくれた祖父が悽惨な死を遂げる。その遺言と遺品から見つかった奇妙な写真。空中浮揚している女の子、大きな石を持ち上げるやせた少年、口が2つある子ども、透明人間・・・・・・。祖父の遺言に従ってウェールズの小さな島を訪れたジェイコブは、廃墟の孤児院でミス・ペレグリンと共に暮らす奇妙なこどもたちと触れ合う。そして、祖父はその人たちと育ったこと、自分も祖父も「怪物の姿が見える」という特別な能力をもつ同じピキューリアの一員であることを知る。また驚くことに彼らは1940年9月3日を今なお毎日繰返しているというのだ。彼らとの一体感が深まり、やがて彼らに襲いかかる殺戮の脅威に立ち向かう日が来た。

不思議なファンタジー小説ではある。しかし同時に、人間の能力の個性と、無限性、生命的時間、ナチス・ドイツとホロコースト、子どもの夢と無垢の友情など、思いは時空を飛ぶ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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