岐路の前にいる君たちに  鷲田清一著.jpg哲学者・鷲田清一さんが、大阪大学総長、京都市立芸術大学学長として、入学式・卒業式で、新しい世界に踏み出す若者へ贈った不定の時代を照らすメッセージ、式辞集。

不定の時代――。「人生もこの社会も、すぐに答えが見つかるような問題だけから成り立っているのではない。政治の領域でも不確定な状況のなかで不確定なまま迅速で的確な判断が求められる。・・・・・・何らかの決定をしなければならない。・・・・・・大事な問題は、答えがすぐに出ないものばかり。すでにわかっていることよりも、わからないまま、見通しのきかないまま、どう的確に処するかの知恵やスキルであるということだ」・・・・・・。そこで大事なのは「教養」「価値の遠近法」だ。「教養があるというのは、ものごとの軽重をわきまえているということ。生きていくうえで①なくてはならないもの(絶対に見失ってはいけないもの)と②あってもいいけどなくてもいいもの③端的になくてもいいもの④絶対にあってはならないもの、起こってはならないこと。この4つの"価値の遠近法"をわきまえるということだ」「不確かな状況のなかで不確かなまま的確な判断と決断ができる、そのための基盤となるのが教養」「教養というのは『複眼をもつ』こと。複眼のなかでこそ、世界はある奥行きをもって浮かび上がってくる」「教養とは、一つの問題に対して必要ないくつもの思考の補助線を立てることができるということ。問題を複眼で見ること、いくつかの異なる視点から問題を照射することができるということだ」「サーヴィス会社というのは、皮肉にも、市民をどんどん受け身にしてゆく、そして市民としての責任の意識を低下させていくものである。課題の根を発見し、自ら解決する力を回復してゆかねば、脆弱なシステムとともに自身が崩れる」「梅棹忠夫さんは、いつも全体を気遣いながら、自分にできるところで責任を担う。そういう教養のあるフォロワーシップについて語っていた。『請われれば一差し舞える人物になれ』と」「自分がこれまで育んできた個性らしきものに閉じこもるな。大切なものだけれど、それは小さすぎる」「異変の徴候への鋭い感受性と、どんな状況にも手業でそれに対応できる器用さ。この二つが人がしたたかに生き延びるために不可欠。微かな異変の徴候を、人より先に感知すること、そしてそれを『掘り下げる』こと。それが芸術の仕事だ」「わからないけどこれは大事という、そんな『余白』を拡げてゆくのが芸術ではないか」・・・・・・。

大事なことが指摘され、有意義で深い。


困窮する学生に10万円給付を――。8日、公明党の斉藤鉄夫幹事長と浮島智子文部科学部会長は萩生田文科相と会い、新型コロナ感染拡大で、仕送りやアルバイトが無くなり経済的に困窮する学生へ「一人10万円の現金給付」を行うよう強く申し入れました。萩生田文科相は「思いは同じだ。早急に対応したい」と表明し、実現に大きく前進しました。

給付対象は、①住民税非課税世帯の学生(約10万人) ②それに準ずる世帯の学生(約10万人) ③中間所得層でアルバイトにより、学業と生活に必要な収入を得ている学生(約24万人)――などです。これには大学院生や専門学校生、外国人留学生などを含みます。

萩生田文科相は「予備費の活用で財源のめどを付けられる」と認識を示しました。学業継続を断念せざるを得ないという深刻な問題のため、公明党として4月20日の申し入れ以来、連休中も中身の詰めを行ってきただけに大きく前進したことは大変に嬉しいことです。


データの世紀 日本経済新聞データエコノミー取材班=編.jpgデータの争奪戦が激しい。ヒト・モノ・カネが生み出すデータ資源が世界を激変させている。GAFAやBATが世界を席巻し、GDPのかなりの部分を食い、そしていつの間にか個人のデータが吸い上げられ、それ自体が価値となって売買される。データの世紀、データエコノミーの時代だが、当然、光と影がある。一昨年、フェイスブックから8700万人の個人データが流出し、政治にも影響を与えたのではないかといわれたり、日本でも昨年、就活サイト「リクナビ」が内定辞退率の予測という重要かつデリケートな個人データを企業に販売していた問題が発覚したり、GAFA等の規制に慎重だった米国も、規制強化に転じ始めている。本書は、同種の本のなかでも、より現場から、より現実的に、取材班がそれこそ自ら体験(「やってみた」コラム)をして現状を浮き彫りにしたなどの特徴がある。リアルに迫って緊迫感がある。

「リクナビ問題」の衝撃――自分の内定辞退率が算出されて販売されている。違法であり、プラットフォーマー規制にも一石が投じられた。「世界が実験室」となり、新たなイノベーションがデータ資源の使い道や価値を問い直す。「エコーチェンバー(共鳴室)現象」――SNSで自分と似た意見を持つ人につながると次々に同じ意見が跳ね返って偏見を増幅していく。政治観を変えられてしまうし、「いいね!」の世論操作がされていく。「GAFA規制」――①プライバシーを守る個人情報保護②健全な競争環境を保つ為の独禁法③適切に課税するための法人税、のあり方の3分野だ。データ資源が爆発的に増え"私"が奪われる――利便を取るか"私"を守るかだが、「ターゲティング広告」は凄まじい。またAIが人を格付けするスコアリング技術が急速に発展している。偽動画のディープフェイク、AIによる美人認定ソフト。一方で、スコアに一喜一憂するウーバー運転手。不正出品に対する審査の甘さがアマゾンの足をすくう。

「AIの56%がデータ不足で苦悩」、しかも保存形態がバラバラで、企業が苦しんでいるという現実も明らかにされる。使えるAIへ、学ばせ方の模索だ。また、データと利益が一握りのIT巨人に集中する「新たな独占」が出現したが、放置すれば市場がゆがみ、過剰な規制は成長を阻むというジレンマに世界は悩む。またIT巨人に対して、企業が悪質な情報漏洩を起こせば賠償請求できるという消費者プライバシー法がカリフォルニア州で今年施行されるなど、個人が立ち上がる動きが始まった。データ版TPPなどデータ経済圏の動きもある。

「テクノロジーを鍛え、正しく進歩させる」――新ルールも混沌とするなか、とてつもない課題に直面している。


連休明けの7日、新型コロナ対策について連続して会議、打ち合わせを行いました。焦点は、「雇用調整助成金」「中小・小規模事業者、個人事業主の家賃」「困窮する大学生」への支援です。4日の安倍総理の会見で与党側のまとめを要望したものです。公明党は連休中も毎日、検討をしてきました。

「雇用調整助成金」は、企業が従業員を休ませたときに支給されるもの。「一人当たり1日8330円の上限の大幅引き上げ」「手続きの簡略化(オンラインなど)」が課題。これをともに直ちに実現します。

「家賃支援」は、自公協議を連休中から行っており①1か月の売り上げが前年同月比で50%以上減、3か月の売り上げが30%以上減の事業者を対象に半年間の家賃の3分の2を特別給付する②家賃対策を行っている自治体は極めて多く(例えば神戸市はテナントとオーナーで話し合い、引き下げ分の5分の4を支援する)ーーと言うもの。最後の詰めを行っています。

「アルバイトや仕送りのなくなった大学生への支援」は公明党が萩生田文部科学大臣に4月20日、5月1日と申し入れを行っており、授業料減免、給付型奨学金等の対象拡大、緊急小口資金の推進などを実現してきました。これをさらにスピードアップし「アルバイト、家賃」を補う大幅な「現金給付」を検討しています。

いずれもスピードが大事、がんばります。


クスノキの番人  東野圭吾著.jpg職場を不当解雇され犯罪を犯したところを、伯母の柳澤千舟に救われた玲斗。千舟は「私はあなたのお母さん、美千恵さんの姉(異母姉妹)です」「あなたにしてもらいたいこと――それはクスノキの番人です」という。柳澤家の敷地内に神社があり、そこに中が空洞となっているクスノキの巨木があって、管理をするように命じられたのだ。そのクスノキには不思議な力があり、その木に祈れば願いが叶うといわれていた。

「新月と満月の夜に祈念する」「クスノキに入れるのは一人」「祈念の内容は極秘」などのルールがあるが、「念」を預け、「念」を受念する――。言葉にならない心の深層を預け、受け取る"祈りの儀式"が繰り返されるなかで、家族のわだかまりが消えたり、切ない思いが理解されたり、新たなスタートが決断されたりする。一念の深さ、重さ、祈りと生死を感じさせる。

「クスノキの番人」である柳澤千舟の品格・誇り・責任と、それを受け継ぐ玲斗の純朴さ・成長がリズムを奏で、鮮やかな感動作となっている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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