全国の公立小中学校の耐震化率99.6%――文科省は6日、今年4月の調査結果を発表しました。耐震性がない建物は、学校の統廃合で廃校となる学校が多いということです。

私は京大土木工学科で耐震工学を専攻。2000年当時は学校耐震化のデータすらない状態で、耐震化に全力をあげることを強く要請してきました。そして、初めて200241日現在で耐震化が44.5%であることが発表され、2003年度予算で学校耐震化予算が増額。以来、毎年の本予算・補正予算で増額されてきました。次に大きな節目となったのが2008年。中国・四川大地震で多くの校舎が倒壊し、多数の児童が犠牲となったことから、福田首相(当時)に直接要請。わずか3週間余りで、改正地震防災対策特別措置法が成立。これにより学校耐震化の実質的な自治体負担額は、従来の31.25%から13.3%へと半分以下に引き下げられ、小中学校を担う各自治体が学校耐震化に取り組みやすくなり、加速しました。この時、衆院文部科学委員長だったのが、佐藤茂樹衆院議員、公明党の幹事長が北側一雄衆院議員。二人をはじめ、多くの公明党の国会議員、地方議員の熱意によって学校の耐震化が進んできました。2009年、民主党政権となって予算が大幅に縮小されましたが、翌年は取り戻しました。

学校耐震化は「子どもの命を守る」とともに、大災害時は緊急避難場所ともなる大事な大事な拠点。防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化に更に頑張ります。


ヒグマとの戦い.jpg「私の叔父(北海道石狩郡当別村)が狩猟家であったので、私の家(札幌郡篠路村)へ訪れると、大きなガンやカモ、ウサギなどをおみやげに時々持ってきた。私はおとなになったら狩人になろうと思った」「徴兵検査がすみ、満21歳で狩猟免状を受けた」「私はついに、ヨローウシの出湯に魅せられて腰を据え、思う存分未開の林野内に鳥獣を追った」「私は、明治44年より今日に至るまでほとんど一生を、未開の森谷渓谷を探して、狩猟と釣りに費したようなもので、最早人生の終着駅にあり、気息奄奄たる老爺になってしまった。この本にあるものは、大正から昭和にかけての若き時代の思い出の昔話である」――。100年前の北海道の原野を縦横に駆け巡り、狩猟に釣り、温泉開発、鉱山発掘などフロンティアマンとして生き抜いてきた西村武重(1892年明治25年生まれ、1983年死去)が、1971年に上梓した代表作「ヒグマとの戦い――ある老狩人の手記」。養老牛温泉がある現在の中標津町が1916(大正5)年には2戸8名だったという。孫にあたる現町長・西村穣氏が「100年前の根室原野を駆け巡った祖父の冒険談の楽しさが伝わると幸いです」と語る。2021年7月5日文庫化。

とにかく凄まじい。開拓時代に最も恐ろしかったヒグマ。打ち続くヒグマとの死闘。戦って命を落とした若者。組みついてヒグマが若者を弾防けにして撃てない。急所をはずした時のヒグマの暴れる姿。そして極寒、豪雪、猛吹雪との命がけの戦い。一転して晴れるや自然の美しさと清浄なる空気、アイヌの酋長である榛幸太郎、滝を登る何百尾ものサケやマス、大ヤマベ釣り、ガンやキネズミ・キツネ狩り・・・・・・。

異次元の壮絶な開拓時代に体当たりされた思いだ。


スモールワールズ.jpg現代社会にありうる「ままならない現実」「内に抱える"秘密"」を鋭角的に、しかも優しく描き出す6篇。それぞれが全く違う状況・場面を鮮やかな文体でスパッと描き、爽快感まで漂う。

第1話「ネオンテトラ」――夫婦円満を装いつつも欝々と不妊に悩む相原美和は、家庭に恵まれない中学生の男子・笙一と出会う。孤独な二人は逢瀬を続けていくが・・・・・・。第2話「魔王の帰還」――鉄二は平和な高校生活を送っていたが、188cmもあり、"魔王"とも称されていた恐ろしい姉ちゃん(真央)が出戻ってきた。「あんたを嫁にもらおうなんて人類は後にも先にもきっとあの人だけよ」といわれて結婚。夫の勇と離婚話が出ているようだが、その裏にある"秘密""真相"とは・・・・・・。絶妙で面白い。

第3話「ピクニック」――初孫の誕生に喜ぶ祖母とその娘家族。だが、生後10か月のその初孫・未希が娘・瑛里子の留守中、突然不慮の死を遂げる。そして祖母・希和子が逮捕され、途方に暮れる。その真相はいったい・・・・・・。第4話「花うた」――これも不思議な物語。兄を殺され、天涯孤独となった新堂深雪は、弁護士に勧められて服役中の「兄を殺した加害者」の向井秋生に手紙を送る。漢字も書けなかった秋生が、手紙をやり取りするなかで、人間としても成長して、二人の心は次第に結びついていくのだった。罪とは、罰とは、反省とは、償いとは、そして赦しとは・・・・・・。

第5話「愛を適量」――中学教師の慎悟は、ある事件を境に教師としての情熱や意欲などとっくに涸れ果て酒びたりの"死んだ"ような毎日だった。そんな時、別れた妻が引き取っていた娘・佳澄が突然、戻ってきた。しかも男のようになって、「俺トランスジェンダーでFtMだって」というのだ。とまどいながらも親としての愛を注ごうとするが・・・・・・。またも過剰な押し付けがましい愛となって・・・・・・。愛の"適量"とは・・・・・・。第6話「式日」――高校時代から友達の少なった仲良しの先輩と後輩。その後輩から父親が死んだので、葬式に出てほしいと頼まれる。葬儀への道中、大切なことも言えずに別れてしまった二人の間の心中が語られていくことに・・・・・・。

いずれも巧妙な「えっ」と驚くストーリーの展開を見せつつ、心の中に潜む「秘密の芯」を探り当てていく。重い話が軽妙でユーモラスに感じさせる傑作。


デジタル化する新興国.jpg「先進国を超えるか、監視社会の到来か」が副題。デジタル技術の進展・加速化が、世界的に展開され、新興国・途上国を経済だけでなく、社会や政治にも大きな地殻変動をもたらした。変化は激しく、中国、インド、東南アジア、アフリカ諸国は、いまや最先端技術の"実験場"と化し、決済サービスやスーパーアプリでは、先進国を凌駕する勢いだ。従来の、先進国をキャッチアップして"履行型"で進むのではなく、明らかに"飛び越え型"展開だ。新興国がどうリスクを抱えているか、課題は何か、雇用はどうなるのか、中国が輸出する監視システムによる国家による取り締まり強化にどう立ち向かうか。可能性とリスクを追いつつ、デジタルを巡る世界の今日的な構造と問題点を、各国の現地点を探りつつ剔抉する。世界の変化が鮮やかに描かれ、"デジタル敗戦"とも言われる日本の課題とめざす方向性が浮き彫りにされる。大変刺激的な力作。

デジタルのもたらす世界の地殻変動と劇的変化を見せる新興国の可能性と脆弱性が示される。「2018年時点で世界人口78億人のうち半数超がインターネット・アクセスを得ている」「2030年までにアフリカ大陸全員がインターネット・アクセスを得るプロジェクトが始動した」「マレーシアで創業し、現在シンガポールに本社を持つグラブ――安全な"車(タクシー)"がなかったので、ライドシェアによって安全性と信用を得ようとした(日本の逆。新興国になかった信用をプラットフォームのもたらす信用に変えた)」「中国は現金や通販取引に対する不信をアリペイで解決した」「アフリカではケニアのM―PESAを筆頭に銀行口座は持たないがケータイを持つ人が通信会社の口座内にお金を預けるモバイル・マネーとして広げた(これもプラットフォーム企業による信用確保の取り組み)」「南アジアに広がるフリーランス経済(データ入力、文書作成等の業務)(国境を越えた業務委託の急増)」「携帯電話の爆発的普及(固定電話を飛び越える)(銀行も乗り越える)」「ラスト・ワンマイルは取りに来てもらう"菜鳥ステーション(アリババ)"で」「インドの個人認証と貧困層への直接給付(かつては社会保障補助金が中抜きされた)」――。ある意味では「後発性の利益(キャッチアップではなく飛び越す)」だ。そしてこれが「スーパーアプリ」としてタクシー配車から行政手続きまで行い、社会インフラとなる。そして「インドの閉鎖型工業化、開放型デジタル化戦略」と「中国の開放型工業化、閉鎖型デジタル化戦略」を採用する違いとなっている。「土台をつくり、後は競争に任せる」のがインドだ。

デジタル経済が成り立つためには3つの階層(レイヤー)がある。①最も基礎的な電話回線、送受信を支える設備と手順=プロトコルという物理層②最上層は人々が利用するアプリケーション層③その上下をつなぐ中間のミドルウェア層(OS)だ。新興国企業の活躍の場は主に②で、インフラでは中国と先進国の存在が圧倒的に大きく、進出・拡大は難しいし、③もプログラマー等の人材不足が悩ましい。また「雇用」も、製造業の雇用は減っていくが、一気には減らない。多くの作業は形を変えつつ必要となる。「自動化で失われる雇用は47%と言う説もあるが、OECDは9%という。機械化する投資額より、労働者を雇った方がコストがかからないこともある」「中国のフードデリバリー最大手の美団点許の配達員は399万人(2019年)、工場労働者より高賃金もある。しかしジェンダーや社会保障の問題が残る」・・・・・・。

「デジタル権威主義とポスト・トゥルース」――権力側はデジタルを活用し、監視や検閲の統治を行う"デジタル権威主義"が強化され、一方ではSNS上での情報戦が展開される。「米中新冷戦とデジタル化、世界の二者択一」が生ずる。加えて「米中対立の激化、中印対立の顕在化」が構図として現われる。そのなかで日本は「新興国がデジタルによって得られる可能性を拡大し、ともに実現し、同時に脆弱性を補うようなアプローチをとるべき。つまり『共創パートナーとしての日本』であるべきだ」と主張する。そしてそのためにも「遅れている日本の国内でのデジタル社会化を進めよ。アプリケーション層とミドルウェア層、物理層のレイヤーごとにもっと進めよ」という。


泳ぐ者.jpgきわめて奥深く、人間心理を探っていく。さすが青山文平さん。重厚で冷静で、行き着く所は人間の業、心の闇の深さと、究極の善悪同居の生身の人間。「生きる」ということへの問いかけだ。時は町人文化の栄えた文化・文政時代(1804年~1830年)――。ロシアが日本の北から、オランダ・イギリスが長崎等へと、日本に迫り、"海防"が幕府の重要課題となり始めていた。幕臣の監察を担う徒目付の片岡直人、優秀な彼に目をかける上役の徒目付組頭・内藤雅之。徒目付は幕臣の非道を糺す御目付の耳目となって動き、秘すべき内々御用も多い。青山文平「半席」から5年、"なぜ"を探る徒目付・片岡直人が、"見抜く者"として不可解な事件の真相とその動機に迫っていく。

長年連れ添った末に突然、離縁をされた63歳になる元妻・菊枝。重病で寝た切りとなった68歳の元夫・藤尾信久を、長子・正嗣の眼前で刺殺する。「なぜそんな歳になって、信久は大事にしてきた美しい妻を離縁したのか」「『同じ墓に入りたくなかった』という理由とは何か。そして越後の"火葬"とは」「"入りたくなかった"と"入れたくなかった"の違いは」、そして「元夫をなぜ離縁から3年半もたって殺害したのか」「"我の化物"菊枝は、なぜ首を吊って死んだか」・・・・・・。直人は、信久の思いと菊枝の思いの食い違い、"闇き業""生きていく苦しみを断つ"ことにたどり着く。「菊枝は鬼がすべてを統べる化物ではなかった。鬼との反りが合わなくなり、化物から抜け出そうとしていた菊枝がいた」「夫からも子からも"かわいそうな人"と思われて生き続けるのは甚く辛かったろう」「菊枝は信久を刺すことで夫を、息子を取り戻したのだ」と悟るのだ。

もう一つの事件――。10月というのに毎日決まった時刻に大川を泳ぐ男、しかも下手で溺れそうな男(蓑吉)がいた。その蓑吉が幕臣に斬り殺される。川島辰三は「お化けだ」と叫んで斬り殺したが、直人は死の間際に蓑吉が微笑んでいたことに"なぜ"と思う。そして蓑吉には弟・仁科耕助がおり、その耕助が水練の"稽古"が過ぎて溺れ死んだ。その"苛め"をしたのが川島であったことにたどり着く。直人の探索は更に進み、蓑吉・耕助の兄弟が幼き頃に想像を絶する苦難に遭遇したこと、蓑吉が抱え込んできた「闇がり」、東三河に起きた村が消滅するほどの凄惨な事件に突き当たるのだ。

いずれも心奥に深く沈潜する"闇い業"にたどり着く。重厚な圧巻ミステリーとなっている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。元国土交通大臣、元水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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