megajisin.jpg南太平洋・トンガ近海の海底火山の巨大噴火が衝撃を与えている。日本における最近の地震の頻発や小笠原の海底火山爆発と軽石漂着などから、大地震の不安が増している。現在は、プレート理論と活断層で地震のメカニズムが説明されている。私もそれでやってきている。本書はこれを「地震の主犯ではない」とし、主犯は「地球内部の熱の流れが地震を起こす」「巨大地震は『地球の熱エネルギーの噴き出し口』から湧き昇ってくる高熱流によって起きており、日本は環太平洋の吹き出し口のルート上にある」という「仮説(まだ仮説の卵ぐらい)」を立て、大地震が近いことの警鐘を鳴らす。

角田予知モデルは、①地殻の奥底である地表から410~660キロの深部で②マグニチュード5.5以上の「深発地震」が③1ヵ月の間に5回以上続発し④同時期に火山活動も盛ん――。その場合に、「1年以内に地表で巨大地震を誘発」とするもの。日本近隣で①から④があった場合は、マグニチュード7超の大地震が誘発されると言う。

この仮説は、学術の世界に任せるとして、首都直下地震と南海トラフの大地震への備えは必要・不可欠。急ぎ取り組み、被害を低減しなければと決意している。


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「緑の防潮堤」に緑が育つ――。東日本大震災から11年となった昨日の3.11。コンクリートがそびえ立つ防潮堤ではなく、「盛土に植樹を」と力を入れたもの。昨年亡くなられた宮脇昭横浜国大名誉教授の指導のもと、岩沼市やボランティアの人たちとともに、私が国交大臣として植樹をしたのが2013年6月(写真(上))。育つのか心配していましたが、多くの方々の並々ならぬ協力によって立派に育っています(写真(下)は今年2月)。国交省としては「緑の防潮堤」のさらなる延長を計画しています。防潮堤は津波防災では必須のもの。しかし「コンクリートで海が見えない」等の問題があることも事実。当時、数十年〜百数十年に1度の「レベル1」と、東日本大震災級の数百年〜千年に1度の「レベル2」の基準を示し、かつ各市町村・住民の声を聞いて建設をしました。この「緑の防潮堤」もあれば、大津波に何度も襲われた宮古市田老では「14.7メートルの巨大防潮堤」、気仙沼では「浮力で立ち上がって高さを増すフラップゲート型」、釜石市では「海が見え漁業ができるよう防潮堤を止めて、道路のかさ上げと高台移転」を選択しました。全体では予定の94%が完成、「多重防御の町づくり」の思想で動いています。

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昨日出席した会合でも、黙祷を捧げました。未だ全国の避難者は38,139人。福島県では今春、帰宅困難地域の一部で避難指示が解除される予定ですが、住民の帰還が実現できない地域もあり、その進捗は不透明で、さらなる支援が必要です。「人間の復興」「心の復興」にさらに力を注いでいきます。


seiyoku.jpg多様性を認め合う社会、ダイバーシティ、LGBTQ、障がい、働き方改革・・・・・・。多様性が求められる社会だが、その内側の懊悩を深くえぐる衝撃作。「どうせ説明したところであなたにはわからないよ」「多様性って言いながら一つの方向に俺らを導こうとするなよ」「自分が想像できる多様性だけ礼賛して、秩序を整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」「私は理解者ですみたいな顔で近づいてくる奴が一番ムカつくんだよ。わかってもらいたいなんて思ってないんだよ。俺は自分のこと、気持ち悪いって思う人がいて当然だと思っている」「なんでお前らは常に自分が誰かを受け入れる側っていう前提なんだ」「異性の性器に性的な関心があるのは、どうして自然なことなんですか」「不幸だからって何してもいいわけじゃないよ。同意がなかったらキスだってセックスだって犯罪だもん。別にあんたたちだけが特別不自由なわけじゃない。・・・・・・はじめから選択肢奪われる辛さも、選択肢はあるのに選べない辛さもどっちも別々の辛さだよ」・・・・・・。

人間の欲望。性欲も異性愛も、欲求も快感もそれぞれ。人が嘔吐する様子に興奮する嘔吐フェチ、丸呑みフェチ、形状変化フェチ、風船フェチ、窒息フェチ、流血フェチ・・・・・・。想像できない欲求を持って生きている人がいる。社会の仕組みや不問の前提に対し、諦観と怒りを持っている。「まとも。普通。一般的。常識的。自分はそちら側にいると思っている人は、どうして、対岸にいると判断した人の生きる道を狭めようとするのだろうか」と主人公の一人は語る。そして「まとも側の岸と対岸を生きる人々」「誰かと繋がる」という事の意味を問いかける。

本書で描くのは令和になった2019年7月、公園で男児のわいせつ画像を撮影したなどの容疑で、大手食品会社勤務の佐々木佳道、大学3年生の諸橋大也、小学校の非常勤講師の谷田部陽平の3人が逮捕・送検される。それに、息子が引きこもりになっている検事の寺井啓喜、吹き出す「水」に快感を覚える桐生夏月、学校祭でダイバーシティフェスに取り組む神戸八重子が絡む。夏月と同様、佐々木も「水」に限りなき興奮を覚えており、二人は同居する。八重子は大也を誘うのだが・・・・・・。


kirawareta.jpg「落合博満は中日をどう変えたのか」が副題。2004年から2011年までの8年間、じつに優勝4回(2004年、2006年、2010年、2011年)。2007年にはクライマックスを勝ち抜いて日本一に輝いた。53年ぶりの制覇、あの完全試合の山井・岩瀬のリレーだ。中日ドラゴンズの黄金期を築き、2011年、優勝にもかかわらず、球団は赤字でファンからも不人気として、「嫌われた監督」落合は追われた。昭和29年、杉下や西沢らで優勝したことを鮮明に覚えている中日ファンの私として、本書は数々の「なぜ」に答える傑作ノンフィクションだ。川崎憲次郎、福留、森野、和田、岩瀬、吉見、荒木ら12人の目を通しての落合像が描かれる。

組織の総合力をいかに引き出すかがリーダーの最要件であることは間違いない。しかし、野球はチーム20人前後の男がプロ中のプロとして死闘を演ずる世界だ。優れた技術を持った男が何人揃うかが大事となる。そこでの総合力だ。だからこそ、落合は妥協せず、信念を持って突き進む。「組織や仲間に迎合せず、『甘え』をそぎ落とし、とことん自分を追い詰め地獄から這い上がったものだけが生き残る」「徹底的に甘えをそぎ落とす」「非情と呼ばれようと、選手を勝つための駒として動かす」「立浪であっても、井端であっても、代えるべきものは代えた」「心は技術で補える。浮き沈みする感情的なプレーや、闘志や気迫といった曖昧なものでもなく、どんな状況でも揺るがない技術を求めた」「勝敗の責任は俺が取る。お前たちは、自分の給料の責任を取るんだ」「勝つことが最大のファンサービスだ。勝てばお客が来る」・・・・・・。非情、冷徹、駒、「建前を嫌い、偽りの笑みを浮かべる位なら孤独を選び、どうせ誤解されるなら無言を貫いた」のだ。序列ではなく、個であること、孤独になること、むしろ徹底して孤独に自己を追い込み、どん底から這い上がる男を求めた。中日はそうした「侍」がレギュラーとして揃ったのだ。

落合には「なぜ」が付きまとった。「なぜ川崎憲次郎を開幕投手としたのか」「なぜ完全試合直前の山井を岩瀬に代えたのか」「なぜ荒木と井端をスイッチしたのか」「なぜ落合は球団を追われたのか」などは、本書に回答がある。監督・落合だけでなく、凄まじい「選手・落合」の人生哲学も語ってもらいたいと思う。


sarakin.jpg「消費者金融と日本社会」が副題。個人への少額の融資を行ってきたサラ金や消費者金融。戦前の素人高利貸から質屋、団地金融を経て、経済変動や不況、法的規制を受けながらも金融技術の革新によって乗り越えてきたサラ金・消費者金融。サラ金が貧困者のセーフティーネットであった事実とともに、多重債務者や苛烈な取り立てによって自己破産や自殺者を生み、多くの人々を破滅へと追いやったことも現実である。「サラ金の非人道性を強調するだけで、問題が本当の意味で解決するとは思えない」「サラ金は、貯蓄超過や金融自由化というマクロな経済環境の変化と深く結びつきながら成長し、現在も日銀・メガバンクを頂点とする重層的な金融構造の中にしっかり根を下ろしている。個人間金融から生まれたサラ金を肥大させたのは、日本の経済発展を支えてきた金融システムと、それを利用する私たち自身だった」「21世紀初頭、主要なサラ金企業の多くはメガバンクを中心とする銀行の傘下に入った。小口信用貸付の主流は、サラ金を含む貸金業から、銀行カードローンへと移りつつある」・・・・・・。戦後76年、激変する日本経済・社会の中で、現場の庶民の生活・家計と小口信用貸付・サラ金という生々しい現実から描く日本の経済史。極めて優れた意欲作。

「家計とジェンダーから見た金融史」「『素人高利貸し』の時代――戦前期」「質屋・月賦から団地金融へ――1950~60年代」「サラリーマン金融と『前向き』の資金需要――高度成長期」「低成長期と『後ろ向き』の資金需要――1970~80年代」「サラ金で借りる人・働く人(債務者の自殺・家出、債務回収の金融技術) ――サラ金パニックから冬の時代へ」「長期不況下での成長と挫折(改正貸金業法の影響と帰結) ――バブル期〜2010年代」「『日本』が生んだサラ金」・・・・・・。

戦後日本の経済・社会が、生々しく描かれる鮮やかな労作。私自身、様々なことが思い起こされる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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