kusunoki.jpg伯母の柳澤千舟に託されて「クスノキの番人」となった直井玲斗。柳澤家の敷地内に神社があり、そこに中が空洞となっているクスノキの巨木があって、その木の中で「念」を預け「念」を受念する。そこで悩みが解決していくという。この不思議な力を持つクスノキと番人である玲斗の元を訪れる人々の織りなす感動的な物語。「クスノキ」シリーズ第二弾。

神社に詩集を置かせて欲しいと頼んできた女子高生の早川佑紀奈。家計に苦しむ彼女は、実は重大な秘密を抱えていた。その頃、近所の高級住宅地で、実業家の森部俊彦が自宅で襲われる強盗致傷事件が起きる。

一方、認知症カフェで玲斗は、脳腫瘍によって、眠ると前日までの記憶が飛んでしまう記憶障害のある少年・針生元哉に出会う。元哉は絵が上手だった。玲斗を介して佑紀奈と元哉は出会い、意気投合。思いもかけないプランが立ち上がる。共同で絵本を作ろうとするのだ。

強盗致傷事件、詩を書く佑紀奈と記憶障害の元哉、認知症が進行していく伯母・千舟。玲斗をはさみ、それぞれが交錯する。特に死を意識して自分の未来を必死で見ようとする元哉の心の揺れと父母への思い。その心の内を探り当て、懸命に尽くそうとする離婚した父母の愛。あえて明るく振る舞う元哉だけに、心に響き辛い。

「食べてみて、さらに驚いた。あの大福だった。昔、三人で食べた大福の味だった。もう我慢できなかった。僕は泣いてしまった。お母さんも泣いていた。隣を見たら、佑紀奈さんも泣いていた。幸せだ、と僕は思った」「未来なんていらない。この先、何が起きるかなんてどうでもいい。知らなくていい。大事なのは今だ」・・・・・・。「未来を知るよりも大事なこと、それは、今がどうかということです。あなたは今、生きています」・・・・・・。大切なのは今、生きていられる喜びに感謝し、一日一日を精一杯生きていくことが幸せ、というメッセージが伝わってくる。事件の謎解きのミステリーではない、その要素を超える感動の小説。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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