「ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム」が副題。鍼灸・漢方薬は今や我々の身近にあり、その力は、西洋医学的な研究でもより明らかになってきている。俗に「東洋医学は人を診る」「西洋医学は病気を診る」と言うが、心身を整える「東洋医学」研究の最前線と、その仕組みを明らかにする。
「鍼灸で『痛み』が和らぐのはなぜか――神経ネットワークを駆け巡る刺激のシグナル」――。人間の体には、361種のツボがあるといい、ツボには痛みなどが生ずる反応点の役割と治療点の役割がある。ツボと同じ位大切なのが、臓器とツボを結ぶ経絡。そして「鍼灸によるツボへの刺激は人体の『末梢』『脊髄』『脳』の3つの場所で作用して、鎮痛効果を生み出していることがわかっている」「鍼灸によって神経性の炎症を発生させ、あるいは筋肉の緊張をほぐすことで、血管を拡張させ、血流が流れやすくなった結果、痛みの部位にある発痛物質が除去される」「脊髄での鎮痛作用は、ゲートコントロール理論」「脳を舞台とする鎮痛作用は下行性疼痛調節系と呼ばれるメカニズムと、視床下部と交感神経を介した鎮痛」が紹介される。最近注目の耳ツボ治療は米軍で使われ広がっていると言う。
「心とからだを整える鍼灸の最新科学――人体の回復力を引き出すメカニズム」――。鍼灸は痛みを鎮める働き以外にも、脳活動やホルモン分泌、自律神経、免疫など、人体のさまざまな生理メカニズムに作用し調節することがわかってきている。体の冷えの改善や胃腸の調子を整える効果やストレス解消、精神症状を改善する効果などの仕組みが明らかになってきている。ドーパミンや幸せホルモンのオキシトシン、ストレスに対抗する働きをもつセロトニンなどの脳の神経伝達物質を、鍼灸は"あやつる"働きをする。「生命維持に欠かせない自律神経を介して『整える』」「免疫機能を調節するメカニズムにも働きかける」のだ。
一方で漢方薬――「漢方薬は体内で『なに』をしているのか――天然の生薬が生み出す多種多彩な作用」「『人に効く』を科学する――効果・注意点を知る」を章立てし、漢方薬について詳述する。「気力と体力を補う三大補剤――補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯」「風邪などへの葛根湯、麻黄湯」「女性の健康に役立つ当帰芍薬散など」「体の水分を調節する五苓散」「アレルギー反応を改善する小青竜湯」「食欲不振や胃に作用する六君子湯」「胃腸の不調やがん治療で注目される半夏瀉心湯」・・・・・・。馴染みの漢方薬の内容が紹介され大変興味深く、参考になる。
肩こり、腰痛、不眠、ストレス過多、肥満、アレルギー、免疫機能、迷走神経、腸内細菌など、昨今の日常生活における悩める課題に、鍼灸・漢方薬、東洋医学の重要性は増大していると実感する。