内館牧子さんの「大相撲の不思議3」は、大変面白かった。本書は2018年に発刊された最初の本。
「土俵という聖域」――土俵は20俵の俵で結界された聖域であり、土俵の外は俗域。ゆえに「平成15年、横綱朝青龍が左手で手刀を切り、左手で懸賞金を受け取ることに私は異を唱えた。日本の場合、右は浄、左は不浄という概念がある」。「土俵築」は機械を一切使わず全て呼出しがやる。すごい光景が紹介される。「土俵祭」は、土俵に神を招き送り出す祭祀。「四本柱」は昭和27年以降は柱を取り払い四色の房となる。奈良時代の天平6(734)年に始まった「相撲節会」では、天皇が北に座して南に向く。北が「正面」、南が「向正面」、正面から見て、土俵の左側が「東」、右側が「西」となる。天子南面すだ。
「一門」――出羽海、二所ノ関、時津風、高砂、伊勢ヶ濱の5つ。平成22年に新しい貴乃花一門が誕生したが、「貴の乱」後に消滅。「懸賞」は神からの贈り物で、手刀は、五穀豊穣への感謝を表すもの。「聞く耳を持たなかった横綱朝青龍」と横綱審議会委員として注意したことを述べている。また「横綱白鵬を変えた"万歳事件"」(平成22年九州場所、63連勝の白鵬を稀勢の里が破った時。九州場所では座布団が4枚つなげで投げられなかった)が紹介されているが、私も同じ感想を持っている。
「番付」――一段違えば虫ケラ同然。横綱、土俵入り、相撲教習所、まわし、下がり、前相撲、髷、四股(醜を踏むという神事に発している)など丁寧に、その意味を紹介してくれる。
「相撲茶屋」「昭和32年の出羽海理事長の割腹事件」。天皇賜杯の裏面に「大正十六年四月二十九日」と刻まれているという。そんな不思議な謎についても解明してくれる。とても面白い素晴らしい本。