全国高校生総合文化祭の表彰式典で、主賓の文部科学大臣かつ文壇の大御所作家でもある清水義之が舞台上手から飛び出してきた男に刺殺される事件が起きる。逮捕された男の名前は永瀬暁、37歳。永瀬は逮捕された後、週刊誌に手記を発表し始める。そこには清水が深く関わっていたとされる新興宗教「世界博愛和光連合(愛光教会)」に対する恨みが綴られていた。弟の難病で、母親が愛光教会にのめり込み、暁の父であり気鋭の作家であった永瀬明(ペンネーム長瀬暁良)は、なぜか清水から徹底弾圧され自殺していた。
またその式典に参加していた作家の白金星賀(ペンネーム金谷灯里)は、この事件を小説として描く。本書の前半が暁の手記(「暁闇」)、後半が金星(白金星賀)の小説(「金星」)という独特の構成。このノンフィクションとフィクションが絡み合ってこそ見えてくる事件の真実。新興宗教に奪い取られた人々の運命と閉鎖空間ゆえに増幅して生まれる浄らかな愛の姿が浮き彫りにされる。
「暁星(あけぼし)」――暁に輝く金星。「金星は星の中では一番明るいが、明け方と夕方しか見えない。明けの明星、宵の明星と呼ばれるように常に太陽と一緒に輝いている。長瀬暁良の著作『暁闇』は夜明け前の暗闇という意味で、夜明け前が一番暗い。だけど必ず日は昇る、人生の闇を乗り越え、暁の空に金星を探そうというメッセージが、ビシビシ伝わってくる作品」・・・・・・。主人公となるのは、暁(小説部分では暁生)と金星。ニ人ともこの小説「暁闇」を感動して読んだが、文壇において暁の父は弾圧され自殺。ニ人の母親は共に愛光教会にのめり込む。暁の母は家を売るほどの多大な献金を、金星の母は娘を教団の上位の道へと必死に押し上げていく。金星は逃げようとしても、ますますがんじがらめになっていく。窒息するような中での暁と金星の結びつく愛・・・・・・。
「結局、ゾンビは一度なったら死ぬまでゾンビなんだよ。人間の世界からは迫害され、ゾンビの世界でも、下っ端ゾンビは食い尽くされて、無残に捨てられるだけ・・・・・・」「じゃあ、俺もだ」「暁生くんのお母さんはゾンビでも、暁生くんは違う。でも、私は一度ゾンビになったから、脱会したのに、人間には戻れない。私の暗闇に夜明けは来ない。太陽がなければ金星は誰にも見えない。そんな人生続ける意味がわからない」・・・・・・。そして「私をゾンビの洞窟に引きずり込んだ愛光教会の日本支部最高位、角龍、清原孝之を殺す。大切なナイフで」と(小説で)金星は言い、暁生は「金星、半分こしよう」と言うのだ。
愛光教会にからめ取られた怒り、苦しみ、悲しみ、逃げ出せない、人質をとられて闘えない・・・・・・。殺人に至る溜めに溜め込んだ心と愛が押し寄せる。
