常識外れのマル暴刑事と極道の意地の戦いを描いた「孤狼の血」の続編。史上最悪の暴力団抗争、「明石組・心和会」の明心戦争が勃発する。田舎の駐在所に異動となった日岡秀一だが、懇意のヤクザから建設会社社長だと紹介された男が、指名手配中で警察と明和組が血眼となって追っている国光寛郎だった。
国光は日岡にいう。「少し時間がほしい。まだやることが残っとる。目処がついたら必ずあんたに手錠を嵌めてもらう」と。・・・・・・「お前みとうなヤツ、刑事じゃないわい。極道以下の外道じゃ!」「自分は、刑事という名の極道だ。国光と同様、目的のためなら外道にでもなる"凶犬"だ」・・・・・・。
"男の世界""人間道の世界""週刊誌などの報道の世界"のズレも描かれる。
副題は「なぜ『#MeToo』への反対が起きたのか」。これまで口を噤んでいた女性たちが男性のセクハラ、レイプを名指しで糾弾するようになったムーブメントだが、フランスではカトリーヌ・ドヌーブら100人の女性が反対声明を発表した。いったい何故。フランスでは「性」についてどう考えているのか。フランス在住の女性ジャーナリスト、外国人ママンである著者が報告する。
「フランス人は8歳から性教育をする」「"不倫はモラルに反しない"という最高裁判決(不倫に寛容な国)」「ママ友に共通するのは、性について、誠意をこめて、言葉を尽くして子どもと話す努力をしていること」「パリ五月革命とエイズがセックスを変えた」「個人のプライバシーが保障され、カップル生活は会社の介入するところではない」「禁欲的なピューリタンが建国の礎を築いたアメリカ生まれの"セクハラ"の定義」「米仏二国間での性意識の違いが浮き彫りになった"ストロスカーン事件"」「恋愛をモラルで断罪しないフランス人(プライバシーについて他人がとやかく言うことではない)」「大統領にお金のスキャンダルがあれば失脚だが、恋愛スキャンダルには寛容」「フランスのカップルの生活はシビアで、その関係には緊張したエロスがある」・・・・・・。
そして「グレーソーンはグレーだからこそ、各人が自分とパートナーに対して責任を持って行動すれば自由な領域にもなり得る。その『自由』は私たちが、権力や体制と戦って獲得したものなのだから、とことん大切にしたいと思う」という。
2018年の今年は、シュペングラーの「西洋の没落」が出てちょうど100年。「西洋の没落」は単線的進歩史観を切る。ゲーテがファウストで示した限界を超えて永遠、無限空間に向かおうとする西洋文化の魂が、18世紀に頂点を示して19世紀、20世紀と没落し、21世紀には西洋文化は末期症状を迎えると予言した。本書はそれを読み解き、現代の世界が直面している諸問題を剔抉する。すさまじい知の力業だ。
シュペングラーの予言は根源的で、驚くほど現代を照射する。そして、本書は「現代を照射している」とだけ言っているのではなく、「政治のポピュリズム」も「金融」「技術」の問題も、通説に流れて問題設定自体ができていないことを鋭角的に指摘する。ベルクソンの「問題は正しく提起された時、それ自体が解決である」ということであり、「リベラリズム」の軽薄さをも暴く。
「経済成長の終焉、アジアの台頭」「グローバル・シティの出現、地方の衰退そして少子化」「"ポスト・トゥルース"の政治とポピュリズム」「リベラリズムの破綻」「人間と技術――機械の支配と技術の拡散、際限なき人間の欲望」「金融の支配、貨幣の独裁」「貨幣と財政――"商品貨幣論と信用貨幣論"から見る財政問題」「予言の方法――西洋中心の進歩史観を破壊した転回の基軸はゲーテの『人間精神の形態学』」「覚悟存在(知性)と現存在(生命全体)の相克が繰り広げる栄枯盛衰のリズム」――。
さて今の日本。上記の通り、いずれからも日本(先進諸国も)は逃れられず、西洋の没落の運命に巻き込まれている。「没落の運命を受け入れざるを得ない時が来たようだ。ただし、それは悲観や諦念に陥るということではない。シュペングラーのように、徹底して懐疑し、執拗に批判する能力と精神力を身につけるということである」という。没落する世界を直視し、生き抜こうとする猛き覚悟ということだ。
日本史というと、「武将の武勇伝」や「英雄の物語」にどうしても偏る。その時、民衆はどう生きたのか。いつも「戦争の被害者」か。それだけではない「たくましい民衆」の姿、「生き延びる民衆」「加害者としての民衆」「チャンスとしての戦乱」の姿を、国際日本文化研究センターの学者が、語り、討論する。面白い。
日本史上、最大の敗戦である「白村江の戦いと民衆」(倉本一宏氏)――。唐の軍勢は国家軍、倭国軍は豪族軍の寄せ集めで地域の農民を連れての出兵。西日本の豪族は疲弊し、壬申の乱の勝敗にも影響を与えた。「応仁の乱と足軽」(呉座勇一氏)――。応仁の乱で初めて登場する足軽には「合戦で活躍する軽装の歩兵部隊」と「略奪に精を出す悪党・強盗」の二面性がある。土一揆、徳政一揆にも関連。慢性的な飢饉状態と治安悪化で毎晩強盗が放火。1400年代の京都を襲った土一揆のひどさと、応仁の乱でこれらが足軽となって略奪行為をした。
「オランダ人が見た大坂の陣」(フレデリック・クレインス氏)――。戦場から避難する民衆、焼き払われた大坂の姿。大坂の陣とアントワープの大虐殺。「禁門の変――民衆たちの明治維新」(磯田道史氏)――。京都の大半が丸焼けとなる大事件。長州の潜伏ゲリラを恐れて、会津や薩摩が火をつける。借家がなく、金を貸すものがいない。京都が首都になれなかった理由が明かされる。鉄砲焼けで火の海となった京都と、京都守護職・松平容保による雇用政策(会津小鉄や五条楽園)・・・・・・。
「とにかく生き残らなければならない民衆」の姿、戦乱にも災害にも「生き延びなくてはならない民衆」の姿が浮き彫りにされる。