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中堅企業の事業継続へ 資本性劣後ローン 

2020年6月12日

新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げが急減した中堅・中小企業の事業継続を下支えするための資金繰り支援として、政府は「資本性劣後ローン制度」を創設する。この仕組みは東日本大震災の際にも活用され、関連予算が2020年度第2次補正予算案に盛り込まれている。事例を交えて紹介する。

東日本大震災で活用、経営再開を速やかに

仙台市内で飲食店経営やケータリング事業などを手掛ける株式会社カリーナフードサービス(長澤睦彦代表取締役)は、東日本大震災で被災したが、日本政策金融公庫(日本公庫)の「震災復興支援資本性ローン」を活用して再生を果たした。

当時、同社では全店舗が被災し、補修費用が大きな負担となっていた。金融機関からの融資だけでは足りず、11年5月に資本性劣後ローンを申し込み、融資を受けた。長澤代表取締役は「ローンは補修費用に充て、残りの資金で経営を維持することができたので、すぐに経営再開が可能になった」と振り返る。その後、旗艦店が再開し、復興景気も後押しして6月頃には売り上げは前年並みに持ち直した。

■純資産とみなす借入金

資本性劣後ローンとは、自己資本(純資産)とみなすことができる"借入金"のことだ。通常、金融機関などから融資を受けた借入金は「負債」として扱われるが、資本性劣後ローンは借り入れをしても自己資本としてみなされる。このため、健全経営の指標である自己資本比率が低下せず、他の金融機関からの融資も受けやすくなる。

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借入金の元本は期限までに一括して返済する「期限一括返済」のため、期限までは利息を払えばよく、業績の悪化や、創業から間もない企業にとっては経営に専念できるのが利点だ。

一方で、デメリットもある。この仕組みを使った企業が破綻し金融機関が債権回収を行う際、他の融資よりも返済が後回しにされる。貸し手にすれば回収できないリスクがあるため、金利が高く設定される。

そこで、東日本大震災の時には、経営が悪化した企業に対して、国が出資して損害担保や利子補給を行い、▽0.4%と3.6%の利率▽貸付期間10年▽無担保、保証人不要▽1社あたり最大7億2000万円――という条件を設けて実施された。

長澤代表取締役は「まとまった資金を調達できる上、一定期間、手元に資金を残しておくことができた。使い勝手が良く、とても助かった」とこの手法の効果を強調する。

コロナ禍での経営悪化に対応/2次補正で政府が出資、低利で実施

政府は2020年度第2次補正予算案で、資本性劣後ローンの供給を軸に約1兆2000億円を計上。政府が日本公庫、商工組合中央金庫(商工中金)などに対して資金を拠出する。

日本公庫や商工中金は、新型コロナの影響で業績が悪化した中小企業などを対象に、▽0.5~2.95%の利率▽貸付期間は最長20年間▽無担保、保証人不要▽1社あたり最大7億2000万円――の資本性劣後ローンを供給する。財務基盤が悪化した中堅・大企業にも同ローンでで支援する。

また、地方の中小、中堅企業を支援する官民ファンドの「地域経済活性化支援機構(REVIC)」 は、地域の金融機関と設立したファンドなどを通じて資本性劣後ローンの供給に取り組むことにしている。

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