ピアニストだって冒険する  中村紘子著.jpg昨年亡くなった世界的なピアニスト・中村紘子さんの直前まで書かれたエッセイ。まさに世界を舞台にした交遊の広さ、文化芸術の深さ、文明や社会への確かな視座、鋭いうえにナチュラルな人間洞察・・・・・・。同世代だが、きわめてドメスティックな自分には異次元の世界に感嘆する。

「音楽の演奏にとって大切なことは、ブレスをとることです。声楽家は肺でとるけれど、ピアニストは手首で呼吸しなければなりません」「時代も、知性と教養を重んじていた世代から、経済優先の価値観に変わりつつあるようにも思えるが、クラシック音楽の世界ではどうだろうか」「名演に飽きた時代への嘆き(ラン・ランの演奏にはそもそも様式や伝統というものを越えた個性と超絶技巧があり・・・・・・音楽のかたちをゆがめてしかもそれが大衆に受けているのを見ると、なんだかピアノを弾くのが虚しくなってくる)」「音楽のちから」「どうも近年、クラシック音楽をはじめとする、いわゆる人間の『成熟度』を必要とする分野に携わる人々の存在感が希薄になってきたように思う。世の中は、政治・経済、そしてスポーツが中心に廻り、芸術文化、特にクラシックはほんのお義理にお飾りのように隅っこの方に参加させて頂いているといった印象だ・・・・・・もてはやされているのは軽チャーであり、未成熟な子供っぽい思考である」「願わくば、文化芸術の偉大さを知り、尊敬に価する優れた知性と豊かな心をもつ政治家こそが、日本の未来を作り上げる中心となって欲しい」「プライドと国家の品格」「大人になりたくない(未成熟を売物とする日本)」・・・・・・。

「ピアニストの冒険は手で始まる」――ピアノ以外で手を使うことのすべては危険な冒険につながり、小中学校で「体育の授業はほとんど見学だった」という中村紘子さん。世界を舞台に真っすぐに走り抜いた人生の境地が率直に語られる。


AX アックス.jpg「兜」は最強の殺し屋だが、普段は文房具メーカーに勤める「三宅」と名乗る会社員。おまけに家では妻に全く頭が上がらない恐妻家だ。業界から抜け出したいと思う兜だが、そのつど持ち込まれる仕事につい手を出すハメになる。妻の尻に敷かれ、びくびくと尋常ではなく気をつかう男が、超一流の殺し屋であったというギャップは笑えるほどだ。

その兜が突然、8階建てのオフィスビルの屋上から落下し、死亡する。「父は自殺ではなかったのでは?」――。息子の克巳の中で父の死に対する疑念がしだいに大きくなっていく。終章末尾に向かってぐいぐいと引きつけていく伊坂幸太郎「殺し屋シリーズ」の最新作。面白い。


防災訓練 171112.jpg

12日、澄み渡る青空と暖かい日射しのなか、地元北区では「防災運動会」や「防災訓練」、「少年少女サッカー大会開会式」「アスリートふれあいフェスタ」「茶華道展」「文化センター祭り」「町会の文化祭」など多くの行事が行われました。

「アスリートふれあいフェスタ」には、日本人初の100メートル9秒台の桐生選手も参加し、俊足を披露していました。

また、北区滝野川地区では「防災運動会」に地域の多くの方々が参加。初期消火体験や給水車展示など通常の訓練だけでなく、防災バケツリレーなどが競技として行われました。災害時は地域のつながりが大切。地域の方々が多く参加でき、こうした工夫された防災訓練はますます大事です。

多くの方々と懇談できました。

北区少年少女サッカー大会171112.jpg


グローバリズム その先の悲劇に備えよ.jpgトランプの登場や英国のEU離脱、分裂の兆しを見せるEUの現状。「今は誰もが驚き、『ポピュリズムだ』『反知性主義だ』とレッテルを貼って安心しようとしている。しかし10年後はどうか・・・・・・グローバリゼーションを時代の必然と盲信して突き進んだ人々が、現実によって復讐される悲劇となる」――。世界経済の一体化がかつてない規模で進み、グローバリゼーションは必然、自明のものとされてきたかのように思うが、ポラニーが指摘しているようにそうではない。その流れのたびに世界秩序は大きく動揺し、そのなかで国家の主権が強化され、国内の社会基盤が整備され、軍事や福祉・社会保障の仕組みが強化されていく。その事実と歴史的文脈を見よ、という。

「ポピュリズムの定義は、条件が2つあって、1つは大衆迎合主義で、もう1つの条件は反グローバリズム」「愚かな民衆はグローバリズムが利益となることを知らないんだ、という文脈でポピュリズムという用語が使われるが、"ものがわかっているエリートvs.わかっていない民衆"という構図は大間違い」「戦後の平和と繁栄は、戦前のグローバル化を踏まえて、貿易や資本移動に制限を加えたおかげ。疎外される人がぐんと減って、平和で豊かになった」「今、起きているポピュリズムは戦前のファシズムと同じと考えるのではなくて、いったんは形成された中間層が崩れたことで生じた不満の爆発だ」「今のアメリカには労働者と富裕層の分断、金融業に関わる人々と製造業に携わる人との分断、ウォール街とラスト・ベルトの対立がある」「英国のEU離脱は主権の回復運動」「"自由貿易が戦後の教訓"は嘘」「近代合理主義は不確実性を克服できない。だからこそ政治が必要だ。政治学というのは不確実性のアートだ」「理論が示す確実性の世界と、現実の不確実性の世界を橋渡しするのが知性のあるべき姿。大衆も政治家も学者も、不確実性に対する忍耐力とかプラグマティズムを失っている」・・・・・・。今の時代に激しく切り込む。


「力の大真空」が世界史を変える  宮家邦彦著.jpg「構図が変化し始めた国際情勢」が副題。とくに東アジア情勢は北朝鮮の核・ミサイル開発、トランプ政権の誕生などから米朝緊張のなかにある。米中露、そして日本、韓国はどう動くか。自国の位置と役割を冷静かつ立体的、戦略的に考え対応しなければならない。しかも英国のEU離脱、米国のトランプ現象、日本も含めてポピュリズムに巻き込まれ、政治指導層の劣化が顕在化している、と宮家さんは懸念する。

南シナ海、中東・・・・・・。危機感が本書から迫ってくる。だからこそだと思うが、きわめて丁寧に、人類の歴史と戦争を説き起こし「力の空白・真空」という概念を使って、危機とそのプレーヤーのあり方を分析する。

国際関係論の主流は「勢力均衡」理論だが、動体視力を駆使しなければならない今、「力の空白・真空」という概念を出す。そして「『大真空』とは、一般現象としての『空白・真空』ではなく、『権力が行使されない』状態が、『数か月から一年程度の比較的短い期間内に生じ、それが政治的、軍事的に大きな影響を周辺に及ぼすような状態』だ」と定義する。

「国際社会と日本がなすべきこと」「日米韓で朝鮮半島の『力の大真空』を埋める」「南シナ海で柔軟かつ積極的に果たす役割」・・・・・・。

構造的分析から重要な提起がされている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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