ri-mann.jpgリーマン・ ショックの引き金の一つとされる巨額詐欺事件「アスクレピオス事件」――。リーマンから371億円を詐取し、獄中14年。その首謀者が、マネーゲームの狂奔の内幕と心の内を赤裸々に暴露した驚愕の告白記。バブルとバブル崩壊、山一、拓銀、長銀等の破綻。金融崩壊の危機的状況のなか、1980年代後半から2008年、世界のリーマン・ショックに至るまで、日本の社会・経済、なかでも金融は揺れに揺れた。様々な事件も起きた。マクロの視点から語られることや、その間起きた事件そのものが語られることは多くあったが、一人の男がその大波の中で、いかに生きたか、いかに破滅に至ったか――「男の人生は、バブル経済の通史であり、裏面史でもある」。そして知られている多くの人が、実名で語られていることにも衝撃を受ける。

著者は1962年生まれ。山一証券で金融マンとしてのスタートを切る。そこでの苛烈の日常、政治家との関わり、そして山一の破綻。社員はバラバラになる。政治家の秘書を志すもすぐに終焉。都民信組を経て、メリルリンチに入り、入社1年目で仕組み債が売れて、なんと年収1億円。2004年に三田証券で、社内ベンチャーとして、医療機関への経営コンサルタント会社「アスクレピオス」を立ち上げ、これがその後独立をする。どの期間をとっても、当時の金融危機のなかで、現場の金融マンが、いかに苛烈で極めて危うい日々であったかを衝撃的に感じる。まさに裏面史そのものだ。

「アスクレピオス事件」――。大手商社丸紅の元課長と組み、リーマン・ブラザーズの日本法人から371億円の出資を受けたが、破綻して償還不能となり、リーマンは全損の被害を被る。サブプライムローンを加工した金融派生商品への危惧が広がり、信用不安に見舞われていたリーマンには極めて手痛いものとなった。リーマンの破綻は、著者が逮捕されて、3か月後の20089月、負債総額は空前の6000億ドル(64兆円)、世界のマネーが凍りついた。

だが問題は、なんとスクレピオスが組成したファンドのあらゆる契約書に、丸紅の債務保証代わりの偽造受領書が差し入れられていた。印鑑も文面も偽造。投資家の誰も丸紅に確認を取らなかった。後には、丸紅の本社でニセの替え玉幹部が面接をすることまで行った。途方もないカネは、自宅にも会社の金庫にも「溢れかえっていた」と言うが、多くの資金は闇に消え、アスクレピオスは破綻。海外逃亡先で逮捕され、詐欺の最高刑10年を超える懲役15年の判決を受ける。2022年の仮釈放までの東京拘置所、長野刑務所の厳しい日々を述べている。

1990年代からの30年余りの波瀾万丈などという言葉は全く通じない狂奔の人生が赤裸々に語られる。驚愕の、衝撃の告白記。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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