22saino.jpgここは京都。見知らぬ街、僕の新しい街だった」――。大学に入学した数学好きの田辺朔。今も昔も変わらないようで、大学生活に馴染めず、漫然と授業を受け、バイトをしているうちに1回生の前期は終わってしまう。後期に入ったある日、旧文学部棟の地下、通称「キュウチカ」にある「バー・ディアハンツ」に、そのマスターをしている夷川歩から誘われる。夷川は学部の先輩だったが、朔は強引にマスターの役を押し付けられる。この学内では風変わりなバーを拠点にして、集う学生たちの現代の青春群像が描かれる。

サークル、恋愛、友人、学問、セックス・・・・・・故郷を離れて、大人の世界の入り口に投げ込まれた若者たちのときめきと不安と苦悩。まさにこれが現代の大学生の心象風景なのかと大変興味深く読んだ。

作者は小説すばる新人賞を高校生で最年少受賞した青年作家。しかも私と同じ愛知県出身、理科系で京都大学大学院という。大学の雰囲気、京都の街が映像として感じられ、50年以上前の学生時代とついつい比べてしまう。意外と「大学生の心象風景は変わらない」という驚きがある。大きく変わってるのは、昔は「政治色」が激しかったことか。デモ、立て看、アジ演説。大学は喧騒の中にあり、思想闘争・論争は日常的で激しかった。体育会系のバンカラも生きていた。しかし青春の不安と苦悩は本書を読むといつの時代も変わらないようだ。

「人は人を救えない。でも、場所は人を救える」――。田辺朔も友人の北垣晴也も、朔が思いを寄せ翻弄される野宮美咲、その野宮が求める夷川、劇団を立ち上げる三井香織、朔と後輩・日岡麻衣・・・・・・。皆、ディアハンツを拠点に、結び、結ばれ、衝突し、距離感を変化させつつ成長していく。そしてそれぞれが、青春の道を、まっすぐに歩み、「22歳の扉」を開けて進んでいく。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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