keekonnno.jpg社会の変化は激しいが、「結婚」がこんなに変化しているのかを衝撃的に感じた。かつては、異性間の結婚をしたカップルにのみ認められた権利は、同性結婚カップルやLG BTQの人たちによって変化し、今や「友人との結婚」にまで広がろうとしている。事実婚、ステップファミリー、同性パートナーシップ、選択的シングルなど、一対の男女による結婚出産というモデルでは捉え切れない家族の形がたくさんある。「ふつうの結婚」「ふつうの家族」の常識は大変化し、友人とも結婚できる社会がすぐそこまで来ている。驚くべきスピードで、と言うのだ。

「結婚をめぐる常識は、変化している」――。「日本以外の国では、平均初婚年齢よりも、第一子出生の平均年齢の方が低い」「2018年時点の婚外子の出生割合は、日本は2%程度、EU平均、OECD平均ともに40%を超える(1990年代以降、婚外同性カップルが急増)」――それは、フランスのPA CS (パックス)を始めパートナー関係をめぐる法制度が見直され、個人に選択肢が与えられるようになったからだ。「選択的シングル」という主体的に子育てを実施する女性も増えている。

「結婚の近代史」――。「見合い結婚と恋愛結婚が逆転するのが1965年前後)」「一夫一婦制に転換したのは明治だが、妾は普通で男性の恋愛や性関係は結婚制度と切り離されたものだった」。しかし戦後の日本国憲法で「両性の合意のみ」と家同士の結合ではなく、個人同士の対等な関係となる。出会いのきっかけは「地縁」から「職縁」へ、2000年代には「婚活」へ、2022年には「マッチングアプリが22.6%」とトップに躍り出た。そして「50歳時において1度も結婚経験のない人」の割合は、「1970年に男性1.7%、女性3.3%2020年には男性28.25%、女性17.81% (国勢調査)」となる。「もはや昭和ではない」のだ。

「離婚と再婚」――。日本の離婚の比率は35%。日本の結婚の26.7%が再婚(2020年の人口動態調査)。ステップファミリー(結婚によって継親子関係を含むことになった家族)が増加している。離婚の増加により一人親世帯の貧困、ステップファミリーの家族関係の困難さが浮き彫りになる。

「事実婚と夫婦別姓」――。北西欧諸国では90年代後半から同性カップルにも、法律婚カップルと同等の生活保障を与えることで、同棲と結婚に大きな差がなくなった。トライアル(お試し)の結婚ではなく、同棲のような緩やかな関係性を選択すると言う。日本ではまだ少ないが、「内縁」「同棲」の後ろ暗いイメージではなく、「結婚している」という意識を持って「事実婚」をしている。「結婚した夫婦が必ず同じ姓を名乗らねばならない」と法律で規定してるのは国連加盟国では日本だけ。ほとんどの国が同姓・別姓・連結姓の選択肢がある。日本は特殊で、「夫婦別姓のため」に事実婚を選ぶケースが多いと言う。「多様性を排除する夫婦同姓制度ゆえに生じている事実婚が多い」のだ。真の問題は「夫婦同姓か夫婦別姓か」ではなく、「同姓のみを強制すること」の妥当性だ。夫婦同姓は明治民法によって成立した制度で、日本の伝統ではない。「子供がかわいそう」などと言う人もいるが、離婚後に8割以上の子供が母親に引き取られる状況で、最初から母親の姓にしておいた方がよほど合理的。「旧姓の通称使用で事足りる」という論調は、職場などで通称使用することが認められないのが普通であったことから、「当事者たちが勝ち取ったもの」と言う。「姓を変えたくない」「姓を変えるわけにはいかない」というのが、当事者の実情。継続的に名乗る、選択肢として認めることを求めていると言う。

「セクシュアルマイノリティと結婚」――。「セクシュアリティの構成要素は、『男女』に2分されるものではなく、グラデーション。生物学的性別、性自認、性的指向の組み合わせ。「セクシュアリティは固有のアイデンティティ。同性婚は、これまで異性愛カップルにだけ認められていた結婚が、同性愛カップルにも認められるようになった」というのが正確だと指摘する。2001年にオランダが世界で初めて、法律上の婚姻として同性婚を認めた。

「結婚の未来」――。近い将来、男性は3人に1人、女性は4人に1人が生涯にわたって、結婚という経験をしないと推計される。「結婚か独身か」として結婚という制度の中に入れようと、「結婚ありき」とするのではなく、人間の支え合いの関係の一つの選択して、結婚を位置づけ直すこと、「結婚を脱中心化していく」ことが、社会にとって重要なことだと主張している。

論点はさらに進み、2017年、同性婚が認められているアイルランドで、長らく親友関係にあった23歳差の男性同士が結婚した(同性愛者でも恋愛関係にもない)。著者は「すでに多くの国で同性同士の結婚が認められるようになった今、友人同士が家族になるための制度やシステムが普及していく可能性は高いように思う」と言っている。社会が激しいスピードで変化し、人と人との結びつきの形も多様になっていくなかで、「結婚」という制度がどうなっていくのか。重大な問題提起が起きている。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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