howaitokara.jpg「私たちは働き方をどう変えるべきか」が副題。2024年問題は建設、輸送などの本格的人手不足の問題。2025問題は、団塊の世代が75歳以上になり、認知症が700万人、空き家が全国で900万近くになる問題。ともに人口減少・少子高齢社会の深刻化、人手不足時代の本格的到来を意味する。

これまでとは全く違う社会。少子高齢化による人手不足と、デジタル化の進展による急激な人余りが同時に起きる社会だ。10年前、冨山さんは「なぜローカル経済から日本は蘇るのか――G Lの経済成長戦略」を著し、グローバルの世界とローカルの世界を区分して観察し、GLがではなく、 G Gとして、LLとして最適な成長戦略を選択・遂行していく道がいかに開かれるかを具体的に提示した。特にローカル経済圏の成長戦略は具体的で刺激的であった。それから10年、少子高齢化による深刻な人手不足とデジタル化の進展で、その問題提起は、まさに日本経済の反転攻勢、地方創生、賃金アップによるデフレ脱却と、庶民の幸福の実現の急所であることを鮮やかに示す。より多くの人が読み、意識改革と具体的行動に踏み出すべき好著だ。

人手不足は、ローカル産業で生じ、人余りは、グローバル産業で顕著に起きる。デジタル化の進展で、これまで日本が「少しでも良い大学を出て漫然とホワイトカラーサラリーマンになる」「終身雇用制」はこれから通用しない。「賃金よりも雇用(低価格戦略でビジネスを守り、余剰人員を抱えたまま経営を続ける低付加価値労働生産性戦略) (雇用を守り、従業員に賃金上昇を我慢させる)」というこれまでのやり方は通用しない。デフレ的安定からインフレ的均衡へ変わっていけるか。人の取り合いとなるから、「人手不足」は「給料不足」は如実となる。しかも人手不足時代は労働移動しても失業にはならないという時代だ。キーワードは高付加価値労働生産性。時代は、「コペルニクス的大転換」が求められていると指摘する。

「グローバル企業は劇的に変わらざるを得ない」――「競合他社にはできないコアコンピタンスによって、戦うフィールドと戦い方を選べば高付加価値ビジネスモデルで戦っていける」「『ややこしさ』に日本の勝ち筋がある」「漫然とホワイトカラーは淘汰される」「「DXCXで変えられる」・・・・・・。

「ローカル経済で確実に進む『人手不足クライシス』」――。「ローカル経済の主な担い手・エッセンシャルワーカー(医療、介護、交通、インフラ、物流、公共サービス、小売り、農水産)。この付加価値労働生産性と賃金と消費力を押し上げることが、持続的な経済成長再生へのただ一つの道である」「人手の余剰が続くホワイトカラーは、エッセンシャルワーカーにジョブシフトすることを前提に、新たな中間層を形成することを考えるべき(多様な人生を肯定して、中産階級に押し上げる)」「インフラの担い手対策。需要密度を維持するため『集住』、コンパクト&ネットワーク」「ブランディングに活路を見出せる農業・水産業・食品と観光の重要性」「医療・社会福祉部門も、付加価値労働生産性が決定的課題」「ローカルとグローバルに序列はない」・・・・・・。

「エッセンシャルワーカーを『アドバンスト』にする」――。「生産性と賃金が高くなるように」「高等教育や資格制度の改革・充実」「経営者のトランスフォーメーションとCXDXは三位一体」「中小企業経営者の債務保証問題など、新陳代謝を阻む制度的要因を取り除け」「最低賃金を引き上げよ――今まではデフレ的均衡のバッファとして、非正規雇用を使って雇用を守ったので、企業が低生産性・低賃金モデルを選択、労働組合も目をつぶってきた」「地方には『昭和』が色濃く残っているから人が来ない。地方の方が仕事はあり、高賃金かつ令和な職場にせよ」・・・・・・。

「悩めるホワイトカラーと、その予備軍への処方箋」――。「根本的処方箋は自己トランスフォーメーション」「まずは自らの『付加価値』力の自己検証から」・・・・・・。

そして最後に「日本再生への20の提言」として改めてまとめている。全分野の「相当レベルの不連続性、革命性を持った経済と社会の改造が必要になる」と言っているが、その通りだと思う。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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