「今日本経済にはささやかな『追い風』が吹いており、経済を活性化させるチャンスを迎えている。そのためには小手先の対症療法ではない、きちんとした制度の改革が必要だ」――。
3つの追い風。1つは、「デジタル化の可能性(AI、生成AI、キャッシュレス化など国際的に遅れているので、デジタル化による生産性向上の余地は大きい)」。2つ目は「円安(円安のメリットをどう使うか)」。そして3つ目は「米中摩擦による『半導体』(TSMCもラピダスも。世界は補助金戦争の時代になっている)」――。
それを活かすには、「制度・規制改革が必要だ」「それには3つの壁がある」と言う。それは「労働市場改革の壁(企業と人の移動で経済は活性化する。テレワークやジョブ型雇用をもっとうまく組み合わせる)」と、「中小企業改革の壁(国からの『補助金』頼み)(中小企業の生産性を上げよ、雇用調整助成金は"ゾンビ化"も)」。そして3つ目は「農業改革の壁(生産性を下げている『農地法・農協法』)(新しい農業法人を、農協依存販売から生産履歴付きの農産物へ)」と言う。
そして「日本再生への3つの羅針盤」を上げる。「①デジタル化を活用したビジネス」、「②富裕層ビジネス」、「③東京をさらに元気に」――。現実に進んでいる実例を挙げて、よりいっそう推進することを提唱する。
さらに具体的に、「制度改革4つの提案」を述べる。「デジタル歳入庁の創設」「政党法の設定」「本格的行政改革の断行」「中期骨太方針をつくる」と言う。
そこで大事なのは「政治が政策を変え、経済が変わる」ということを強調する。「官僚主導の政治は近視眼的で対症療法的になる」「真の行政改革、公務員改革、政治主導の政治」を、小泉政権などで自身のやってきたこと(経済財政諮問会議、郵政改革、不良債権処理)を述べている。私は「政治主導か官僚主導か」には全く違和感があり、要は政治家の力、リーダーシップこそが大事で、官僚自身がそれを求め、そこに力が発揮できることを実感してきた。政治に熱量がないと対応型で重要・根源的な論議をしないで惰性に流れてしまう。本書で指摘するように、本格的に改革すべきことは山ほどある。しかもスピーディーに。
問題・課題を時間軸の中で本質的に捉える、構造的に捉え、今の実践に踏み出すことが大事だと思ってきた。同時に、「政治は庶民を幸せにするためにある」「時間軸を持って未来に責任」だと思っている。「権力の魔性とポピュリズムにどう抗するか」が政治家に問われている。この30年の政治を思い起こしつつ読んだ。