yakyuuhjinsei.jpg「私の履歴書」(20077月 日本経済新聞)、「野球は人生そのものだ」(200911月 日経新聞出版)を底本として202012月発刊された最新の「自伝」。

とにかく、圧倒的な闘争心がほとばしる。大リーグに誘われた。だがジャイアンツただ一筋。ヤンキースのディマジオに憧れた。「私が休んだそのゲームに私を初めて見に来てくれた子供がいるかもしれない」と驚異の56試合連続安打のディマジオは怪我をおして出場したが、それが長嶋そのもの。「周りの人が喜んでくれるのか。自分をどう表現したらいいか、そればかりを片時も忘れず考えていた」「プロとは、表現力、観客に感動を抱かせる、それがプロたるものの使命である」――。先日も落合が語っているのをテレビで見た。

「野球は格闘技」――それもディマジオだが、叩き込んだのは、恩師である砂押立教監督の伝説の猛特訓。知っている話だが、今改めて凄まじい。

有名な話ばかりだが、怪我もあり、スランプは常にある。そこを取り戻す皆に見せない懊悩と努力。「私の本質というのは、天才肌でも何でもない。夜中の1時、2時に苦闘してバット振っている。人がいなくなったところでは、自分との技への血みどろの格闘を一人で必死にやってきた。・・・・・・舞台裏を見せないのが、プロとしての私の信条だ。プロとは夢を売る商売」「巨人の『4番の座』を守るために、朝から晩まで、命がけの練習をやり抜いた」――。先日、松井が言っていたが、「バットが空を切る音がある。素振りする風の音のちょっとした変化でわかる。つかんだ技術もまたすぐ離れていく。天才肌と動物的勘だけで過ごされるような世界ではない」・・・・・・。「燃えるというのは、集中力が燃えること。集中力がバーッと燃えた場合は、逆に冷静になる。血がファーと落ちてきて、スーッと冷静になる。カッカしていたら、勝負には勝てない」・・・・・・。「中途半端に終わった人は、誇りが体内に養成されない。やはり誇りは大事だ」・・・・・・

「『勝負強さ』という一点に自分の打撃を収斂させていった中距離バッターだ」「王さんは『天才』、僕はいわゆる一つの『努力の人』」「王さんには、頼れる荒川博さんという名伯楽がいた。私をいつも見守るコーチはいない。試合後、自宅に直行し、地下室の電気のスイッチを切り、パンツ一丁で暗闇の中でバットを振る。スイングが空気を切り裂く音に神経を集中させる」・・・・・・

プロの生き様を語る言葉は深くボディに食い込んでくる。

昭和4910月、現役最後の試合は中日戦。優勝が決まっていた中日の中で、何が何でもと高木守道が駆けつけたの覚えている。そして監督になった後の苦悩、2度目の監督で伊東の地獄の秋季キャンプ、メイクドラマ・・・・・・。一つ一つを私もくっきり、全部と言っていいほど覚えている。

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2002917日、ちょうど日朝平壌宣言の日の夜。後楽園ドームで渡邉恒雄さん、長嶋さん、二階さん、大島さんと私で野球観戦をした。平壌が気になってテレビ報道を見ていたが、長嶋さんと2人だけで解説を受けながら野球を観る贅沢な時間もあった。「長嶋です」と、両手を添えて名刺をくださった丁寧な姿を思い出す。私が感じたのは、勝負の世界を生き抜き鍛えた「人格」だった。「野球は人生そのものだ」という色紙もいただいた。写真はその時のものだ。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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