無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか.jpg9.11同時多発テロ以降、昨年11月のパリ同時多発テロ、今年3月のベルギー連続テロに至るまで、テロの脅威は増している。近年のテロは、無差別化、大規模化し、非人道性が顕著になっている。

国際社会はこの無差別テロにどう立ち向かうべきか。本書は国際的な体制のなかで、どう法的に規制できるかを問いかけている。「テロの歴史的経緯」「被害者の目線から見たテロ(被害者への補償はどうあるべきか)」「テロ対策とプライバシー侵害、テロリスト殺害における違法性の是非」「テロの定義確立の重要性」「テロに対抗する国際的協調体制(条約と課題)」――研究がまだまだ確立されていない分野に踏み込み、課題が浮き彫りにされる。

テロの暴力に対して力で対抗しなければならない認識も確かに広まったが、暴力の連鎖は避けなければならない。金惠京さんは、何を基盤としてテロに対処すべきなのか。「軍事力や監視体制の強化に主軸を置くのか」あるいは「法的正当性を示すための軍事力の行使を行いつつも自らの理念を守るのか」が問われていると指摘する。「テロを抑え込むならば多少の人権侵害も許される」という安易な道に走ることを抑制しつつ、法に基づいた国際的協調体制をどう築くかという難しい道を模索している。


吹けよ風 呼べよ嵐.jpg時代は1550年前後の戦国。北信濃の地は、南から甲斐の武田晴信(信玄)が野望をたぎらせ侵攻を重ねる。その脅威に加えて武田方につく真田幸綱の調略に翻弄される北信の盟主・村上義清は、北信濃有数の国人・須田氏の嫡男・満親(幼名弥一郎)を頼りとする。満親は後ろだてとして長尾景虎(上杉謙信)に支援を請う使者にもなるが、景虎からも大いなる信頼を得る。そして、五次にわたる川中島の合戦(信玄に三太刀斬りつけたあの合戦は第4次)・・・・・・。

義を貫く以外、寄る辺はない――「南から来た不義の男に、北信の調和が乱されておるというのか」「人とは悲しいものよ。何かが欲しくなれば、力ずくでもそれを奪おうとする。・・・・・・義を知る者はそうではない。義だけが欲に勝てるのだ」・・・・・・。

武門も仏門も、衆生を救うためにある――「武田晴信という野望に囚われた男が、この地に侵攻してこなければ、須田家とその領民たちは、貧しいながらも幸せな日々を過ごしていたはずである」「罪なき民を、欲深き者たちの魔手から守ることが、武門に生きる者の務め」「欲深き武門の者どもをお見捨てになるのは当然のことです。しかしながら、民をお見捨てになってもよろしいのか」「天が『衆生の生活を守れ』とご命じになったのです」・・・・・・。

東信、北信のめまぐるしい攻防。そのなかで、敵対関係となった二人の若者・須田満親と須田信正(幼名甚八郎)の心の葛藤と、各武将の運命・宿命を描く。信玄、謙信からではなく北信の武将からの川中島合戦!


2020年世界経済の勝者と敗者.jpgポール・クルーグマンと浜田宏一さんが「アメリカの出口戦略」「日本のアベノミクス」「ヨーロッパの解体」「中国バブルの深度」の章を立て、それぞれが語っている。

世界経済は年頭から荒れた。原油安、中国経済の減速、ヨーロッパ経済は統一通貨ユーロの弱点の露呈のなかにあるが、それらを分析しつつ、再建途上にある「アメリカ経済と日本のアベノミクス」の役割りが大きいことを指摘する。

アベノミクスは「金融と財政の両面から経済を刺激しよう」というものだが、「日本は世界のロール・モデルに」「インフレ・ターゲットは4%で」「女性活用で伸びる潜在成長率」「消費税10%は絶対不可」「日本のバブル以上に大きい中国バブル」「日本国債を格付けするならAAA」などとクルーグマンは語る。内閣官房参与である浜田さんは、アベノミクスを解説し、補強する。


長篠の四人 信長の難題.jpg天正3年(1575年)4月、武田勝頼が長篠城を急襲する。勝頼の狙いの本丸は、三河・吉田城の奪取であり、野田城や牛久保が焼討ち等で脅かされる。たった500の軍勢で踏んばる奥平九八郎信昌。城を支配下におく家康は信長に援軍を頼み、勝頼を三河から蹴りだそうと織田・徳川連合軍が立ち上がる。そこに戦歴充分で鉄砲術の名手である明智光秀と、圧倒的な情報収集力と土木作事の名手・羽柴秀吉が信長の懐刀として派遣される。この時代を画した決戦は「鉄砲対騎馬武者の戦い」として知られるが、その真実は如何。

信長の無茶振りに、いつも翻弄される家康・秀吉・光秀の3人。今回は「織田軍の一兵も損せずに武田に勝て」「84日間で守り抜け」という難題だ。調子のいい秀吉、流浪が長かった還暦間際のちゃらんぽらんな老人・光秀、苦労と努力を重ね慎重な家康、それぞれが描かれ面白い。私の故郷の新城、野田城、牛久保、吉田(豊橋)、そして遠足で行った長篠城・・・・・・。なつかしい。


嫌われる勇気.jpg自己啓発の源流「アドラー」の教え――と副題にある。フロイト・ユングと並ぶ心理学のもう一人の巨頭・アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を、青年と哲人の対話という形でまとめたのが本書。

「アドラー心理学は、過去の"原因"ではなく、いまの"目的"を考える」「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」「われわれを苦しめる劣等感は"客観的な事実ではなく"主観的な解釈"なのだ」「承認欲求を否定せよ、他者の期待を満たすな、もっと自分本位に生きよ」「課題を分離せよ」「"あのとき殴られたから父との関係が悪くなった"というのはフロイト的な原因論発想。父との関係をよくしたくないために、殴られた記憶を持ち出していたというのがアドラー的な目的論の立場」「対人関係のゴールは"共同体感覚"」「人は"わたしは共同体にとって有益なのだ"と思えたときこそ、自らの価値を実感できる」「自己肯定ではなく、交換不能な"このわたし"をありのままに受け入れる自己受容を」「人生とは連続する刹那。"いま、ここ"を真剣に生きるべき」――。

古賀さんは、アドラー心理学を語る岸見さんにふれ、「岸見アドラー学」だという。現当二世、今ここに、自己自身に生きよ、ということだと思う。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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