毎年、成人式を迎えて驚くことがある。今年、私の地元・北区と豊島区で、それぞれ21.4%、39%が外国人だった。急増している。新宿区は45.2%が外国人で最高だが、全国でも外国人が多い市町村がある。全国8割の自治体で外国人は急増しており、「外国人がいなければ、農業も漁業も製造業も続けられない」という実態が全国あちこちである。明らかに外国人"依存"ニッポンがすでに始まっている。
「まるで"アラカワスタン"荒川区」「リトル・エチオピア・葛飾区」「荒川はガンジス川・江戸川区」「コリアンタウンが"縮小?"新大久保」「世界で東京だけのネパール学校・杉並区」「国際化する島根県出雲市」「財政維持に不可欠な存在・北海道東川町」と超・多国籍化する街の実態がルポされている。
しかし、問題も多い。「がらがらの日本語クラス・フィリピン」「恋愛もダメという日本の職場」「中断する授業と足りない人員・福井県越前市」「教室が足りない・出雲市」「保育園にとどまる10歳児・浜松市」「推計8400人超の"不就学"外国人」「"ガイジン"に対するいじめ」「増えてきた老いる外国人」・・・・・・。真剣に考えないといけない。共生する日本だ。
最後に「『移民国家』の事例から考える外国人"依存"」として、ドイツ、フランス、カナダ、フィンランド、シンガポールなどが例示されている。改正出入国管理法が2019年4月から施行された。もっともっと態勢を整えなくてはならない。
「覇権をめぐる400年史」が副題。海洋覇権の歴史は激しく、露骨なほどだ。大航海時代のスペイン・ポルトガルによる大西洋の東西分割であるトルデシリャス条約は、今日のブラジルがポルトガル語の国であることを改めて想起させる。次に東インド会社を設立し、貿易立国をめざしたイギリスとオランダが激突する。「国際法の父」グロティウス(オランダ)の海洋自由論は先行するポルトガルの大きな存在感を乗り越えようとした理論でもあった。1652年から1674年の間に3度にわたって戦われた英蘭戦争は、海洋覇権をめぐる本格的な初の戦争となった。18世紀から19世紀にかけて、イギリスは海洋大国へと躍進する。自国沿岸沖を領有しつつ、世界の海を支配したいイギリスは、各国の領海を狭くすべく領海3カイリ主義を打ち立てる。石炭ステーションを全世界に確保し、「海を制した大英帝国」が完成する。日英同盟直後の日露戦争、品質の悪い石炭しか得られなかったバルチック艦隊は黒煙で視界が不良だったという。スエズ運河をめぐってのディズレーリ首相とロスチャイルドの提携など、海洋の歴史は生々しい。20世紀に入ると主役の座はアメリカとなる。その背景に石炭から石油の時代がある。そして、パナマ運河の建設と巨大な海軍力を保有するようセルドア・ローズベルトは突き進む。海軍の軍拡競争の激化の時代から海軍軍縮会議の時代を経て、第二次世界大戦への戦艦から空母の時代へ移るのだ。
第二次世界大戦後、トルーマン宣言をきっかけに、途上国をはじめとする世界の国々が海洋の領有化に乗り出す。トルーマン宣言は海底油田の開発と水産資源の管理を柱とし、海洋を「海上」「海中」「海底」の3つの権利を狙ったのだ。そこで海洋の無秩序な領有化に規制をかけるように、1982年、「海の憲法」と呼ばれる国連海洋法条約が制定され、1994年に発効される。アメリカは深海底に関する条項に拒否反応を今も続け、署名していない。この条約は領海(12カイリ)、接続水域(24カイリ)、排他的経済水域(EEZ、200カイリ)、大陸棚、公海、島や岩礁の定義、海洋航行のルールなどを包括的に定め、海洋の平和利用と開発が両立するように制定され、ルールとして国際社会に浸透してきた。21世紀になって顕著なのは、中国の南シナ海への進出などの動きだ。本書は「国際ルールに挑戦する中国」と「海洋秩序を守る日本」の章立てをして、「日本の海上保安庁は、質量ともに世界の最高レベルに達しており、日本が世界に誇る海上法執行機関である。この分野で見れば、アメリカ海岸警備隊と並んで、世界モデルといってよいだろう」と言っている。きわめて誠実かつ俯瞰的に海をめぐる400年の歴史を描き出す。そして現在の課題も。
海上保安庁の使命と役割は大きい。海上保安庁は、世界でも類を見ない純然たる海上法執行機関で誇るべきものだ。しかし、その現実の姿が知られているかといえばそうではない。「海洋立国日本」を24時間護り続ける海保の真剣な戦いと凄絶な苦労は知られていない。海上保安大学校出身で、特殊警備隊(SST)基地長、第十管区本部長、警備救難部長等を経て、海保長官を務めた佐藤雄二氏が、自ら任に当たった現場の戦いを綴った貴重な記録。副題は「叩き上げ海保長官の重大事案ファイル」。凄まじい丈夫の真剣勝負、緊迫の戦いの日々に感動する。私の国交大臣の時の海保長官で苦労をかけた。
「ソ連漁船の検挙、冬の海に転落(1978年室蘭)」「台湾密漁船の取締り(1979年)」「巡視船をペルシャ湾へ派遣せよ」「潜水艦『なだしお』事件(1988年)」「船内暴動を鎮圧せよ(1989年)」「関西国際空港海上警備隊隊長として昼夜のテロ防止(1990年)」「核燃料輸送船を護衛せよ(1992年)」「薬物密輸船を検挙せよ」「尖閣諸島を護れ」「不審船を捕捉せよ。能登半島沖事件(初の海上警備行動)(1999年)」「特殊警備基地長として九州南西海域工作船事件(2001年)」「中国漁船の襲来を防げ、巡視船衝突事件(2010年)」「東日本大震災と海保(2011年)」「尖閣諸島と中国公船」「小笠原周辺での中国サンゴ漁船密漁事件(2014年)」・・・・・・。
「苦しい 疲れた もうやめたでは 人の命は救えない」――海の危機と向き合っている緊張感が全てに横溢している。
巧妙というか、絶妙というか、スルスルと宮部みゆきの世界に引き込まれていく。「三島屋変調百物語の六之続」だ。今度は、第一話から聞き手を務めてきた「おちか」が嫁に行ったので、三島屋の主人・伊兵衛の次男・富次郎が聞き手となる。百物語の守り役・お勝と古参の女中・おしまの3人で語り手を迎えることになる。4話ある。
「黒武御神火御殿」――。小伝馬町の質屋、二葉屋の女中・お秋の印半天を三島屋は手に入れるが、そこには何かまじないのような言葉が書いてあった。語り手の梅屋甚三郎とお秋と亥之助爺さんの3人は、だだっ広い屋敷に迷い込んでしまう。そこにあと2人、そして更に武士が1人加わり、翼のある化け物に襲われたりする。化け物の潜む森に囲まれ、広さも造りも判然としない屋敷。手掛かりとして残るのは「黒武」の名の入った印半天のみ。6人の囚われ人に6枚だけある印半天。さらに屋敷を進むと広間には赤黒色の火山が襖絵から溶岩を転げ出している。なぜに屋敷に閉じ込められたのか。どうすれば解き放たれるのか。「悔い改めよ、罪ある者よ」との野太い声。神が宿る大島三原山の御神火だ。屋敷に囚われた6人のそれぞれの罪とは何なのか。そしてこの屋敷の謎とは、そして"ひらがな文字"の謎とは・・・・・・。バテレン追放、大島への流罪、そのなかでの噴火・御神火と領主の憤怒という真相に突き当たる。
「泣きぼくろ」――語り手として来たのは、幼なじみの豆腐屋「豆源」の八太郎だった。家族の女性に突然"泣きぼくろ"が付いて「てろり~ん」不貞を犯してしまう。それが続いて一家はバラバラの離散、店もなくなってしまったという。「姑の墓」――恨みをもった姑が「絶景の丘」に葬られ、嫁が来ると突き落とす。登ってはならないという丘。「同行二人」――妻子を失い走っていれば忘れることができると飛脚をする。道中いろいろな怪異に巡り合うが・・・・・・。
人間の欲望と苦悶と失意、憤怒と怨念の世界が実に巧妙に描かれる。火山はその業火だ。変わり百物語――人は「打ち明けて、これが本当にあったことだと、自分たちの身の上に襲いかかったことだと、すっかり吐き出して楽になりたい。慰めてほしい。共に恐れてほしい」と思うものだ。せめて一人だけでも。
3.11東日本大震災から9年。新型コロナ感染症との戦いで、「追悼の式典」も中止された。しかし、本書原作の映画「Fukushima50(フクシマフィフティ)」がこの3月6日に公開され、書店には本書が店頭に並んでいる。「吉田昌郎と福島第一原発」「現場に残った勇気ある50人を世界はこう呼んだ」とあるが、本書を読み、「東日本大震災」「原発」に対して、多くの被災された方々、これに戦いを挑んだ方々に思いを致し、人間の「慢心」を戒め、復興に努めることが大事だと思う。
迫真のギリギリの局面が次々と甦る。大地震、大津波の襲来、そして全電源喪失。「人命と原子炉を守る」――吉田昌郎所長、伊沢郁夫中央制御室当直長(1号機、2号機)らの死に物狂いの戦い。原子炉へ水のラインを開けるべく突入。格納容器の圧力の異常上昇とベント。「俺が行く」――誰が原子炉建屋に突入するか。「われを忘れた官邸」と菅首相の乱入、「なんでベントをやらないんだ!」。自衛隊の消防車への"出動要請"。原子炉建屋への突入、ベント操作。ベントへの再チャレンジ。1号機で水素爆発、建屋の5階が吹き飛ぶ。海水注入。海水注入中止の命令(官邸の介入と混乱)。3号機の原子炉建屋で水素爆発。水が入っていかず最大の危機を迎えていた2号機。「全員撤退」問題と菅首相の東電での発言。2Fへの退避と残った69人(フクシマフィフティ)。協力企業のなかにも現場に戻る必死の男、決死の自衛隊。凄まじい執念の注水作業で暴走するプラントも冷却へ。「家族」「七千羽の折鶴」「運命を背負った男・吉田昌郎と地涌菩薩。チェルノブイリ事故×10」・・・・・・。
「決死の仲間」「人間の"慢心"と"侮り"」「現場のわからない中央のリーダー」「人間には命を賭けなければならない時がある。その命を賭けて毅然と物事に対処していく人がいる」・・・・・・。土壇場における「現場の底力と信念」が日本の本当の力である。そして日本を救った。感謝。