ittamonogati.jpg「ポピュリズムとSNS 民意にどう向き合うか」が副題。昨年の東京都知事選挙から選挙が変わり、衆議院選挙、兵庫知事選を経て、2025年参院選で完全に選挙が変わった。「砂になった民意」「中間団体の衰退でバラバラになった社会、そうした流れを加速させるSNS」――。まさに「ポピュリズムとSNS」が席巻する参議院選となった。

「居住地域とのつながりが薄れ、中間団体が廃れ、派閥も消滅し、バラバラとなった国民政党」――。中間団体が廃れ、民意が砂と化す以上、選挙で勝ち抜かねばならない議員は、ポピュリズムの誘惑にさらされる。「ポピュリズムは、デモクラシーの後を影のようについてくる」(英国の政治学者マーガレット・カノヴァン)わけだ。新聞、テレビから次第に離れ、ネット、SNS時代、しかもダイパ・コスパ時代となれば、短い、刺激的な言葉・動画が好まれる。いつの間にか多くの個人情報が集積され、「世論操作」され、「フェイクに誘導」される危ういデジタル・ポピュリズムの選挙があらわになっている。その実態に迫ろうと取材したのが本書。630日発行なので、東京都議選、参議院選挙の結果は入っていないが、構造分析はその通り。

「民意とは何か」「民意をどうつかむか」「SNSと動画サイト(2024年の選挙を振り返る)」――。陰謀論的議論を信じた斉藤氏の支持者。ネットを通じた地上戦(自民党牧島かれん)、駅頭を舞台として「駅頭に民意あり」(維新の金村龍那)・・・・・・。現場の戦いが紹介される。

知恵と執念が「ほとばしる」ことなくして勝利はない。そして知恵は現場にある。問題は現場に現れる。「問題は正しく提起された時、それ自体が解決である(アンリ・ベルクソン)」と言うが、フェイクに誘導されないためには、「徹して一次情報に触れること」「伝達され数値化された情報に惑わされるな」「勉強を怠るな」「木を見て森を見ないという言葉があるが(その逆も)、森に入り木を見ることだ」と思う。西部邁氏は「ポピュリズム(人民主義)とポピュラリズム(大衆迎合人気主義)を分けよ」と言ったが、現場主義こそポピュリズムへの誘惑に抗する力だと感じてきた。

デジタル・ポピュリズムが席巻する今、そのポピュリズムに抗する政治家が求められる。大変な時代を迎えている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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