060519「悪魔の種子」.jpg内田康夫さんの浅見光彦99番目の作品。幻冬舎創立11周年記念特別作品。
秋田県西馬音内盆踊りの最中、茨城県農業研究所に勤務する男がヨロヨロとした足取りで踊りの列へ入り死亡する。また霞ヶ浦で長岡農業研究所勤務の男の溺死体が発見される。「花粉症緩和米」開発とその実験田にからむ連続殺人事件に、浅見光彦がしなやかな思考で挑む。

神でさえしなかった新種作り(神の領域)に、「自然の摂理に逆らわない方がいい」と思いつつ挑む人間の業が、事件を生む。


「日本経済の構造変動」.jpg「90年代においては、デフレ、不良債権、構造調整の3つが負の相互補完性を持って影響しあっていた」が、今、3つの課題の相互関係がプラス方向に作用し始めていると小峰さんはいう。
日本の経済・社会の構造変動を直視して、時代が要請する構造改革をやる。今よくいわれる貧富の格差が発生した、その為の政策は別途用意する。


日本型システムといっても雇用も企業経営も、金融もいろいろあるが、それがまさに相互補完性をもって成り立って今日まできており、それが、グローバリゼーション、少子高齢化をはじめとする構造変化に対して、結合しているがゆえにドミノ倒し的になる、ということをよく示してくれている。
政治における「構造改革」について、「社会や経済がどんどん構造変化している。それをとらえよ」といい続けてきた私としては、本書の冷静な分析はきわめて有意義であった。


060508「良心の自由と子どもたち」.gif教育の独立・中立性。思想・良心の自由(憲法19条)。きわめて重要な問題を現実に即して丁寧に分析してくれている。
「北九州市国歌斉唱処分取消訴訟」「良心的兵役拒否はなぜ保障されるか」「米国の義務教育事件」「神戸高専事件(剣道実技拒否)」「"不当な支配"と国家はどこまで教育にかかわれるか」「旭川学力テスト事件」「道徳・思想の中立性(宗教に対する国家の中立性)」「福岡市の愛国心通知表と評価基準の一元化」「規範意識の形成と"親と学校"」「伝習館高校事件と広島県教育委員会」など、論議は基本的かつデリケートだ。


060506「市場には心がない」.gif「改革なくして成長なし」ではなく、「成長なくして改革なし」というのはある話だが、都留さんは「成長なくて改革をこそ」という。

対米一辺倒からの脱却と、成長を前提としない改革を提言する。非核や安保廃棄で平和条約、シュマッハー「スモール イズ ビューティフル」、「市場化は市場の領域を拡大することにより、自己決定権を少なくする。

ところが、福祉のために非市場の領域を拡大しなければならないとすると、自己決定権の拡大を必要とする」「社会保障は、権利なのか恩恵なのか(シビル・ミニマムとしての社会保障)」「不良債権処理がなぜ構造改革か。産業の再配置という構造改革」「消費税の引き上げではない。資本所得に対する課税を強化して得られる"フローの社会化"の中から社会保障給付の財源を確保できる」「豊かさの貧困とスローライフ」などの指摘が、どうしても「なつかしい」思いがする。

経済を専門的に掘り下げてほしいという思いが残るが、遺稿となった。


060427「リベラルからの反撃」.jpg昨年の「論座」7月号の「政治家は『勇ましい姿』より『ちょっと待てよ』の気概を」(久間さん、仙谷さん、そして私太田の対談)が掲載されている。
後藤田正晴さんの「遺言」はこんなに平易に語れるかと思うほどだ。「憲法というのは、民主主義を信用しないからこそ大事」「憲法という国家の基本法へのシニズムを生み出す危険水域に入っている」(大沼保昭氏)、さらに「立憲主義がまず用意する手立ては、人々の生活領域を私的な領域と公的な領域とに区分すること」として、

価値の多元化した近代社会で、人々が立場の違いのなかで生きるために立憲主義があるという長谷部恭男氏。そして梅原・五百旗頭対談もいい。ナショナリズムの危険性を理解し、それをコントロールできる多くの人が必要となっている。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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