「日本力」 .jpgアジアを引っぱる経済、欧米が憧れる文化!そして「くたばれ悲観論」がサブタイトルにもなっている。
環境技術やトヨタの強さ、そしてトヨタだけでない他の自動車企業の競争、失われた産業のほとんどない日本の頑張り、ポップカルチャーの発信、丁寧で仕上げがよく品質の良い日本製品とものづくり・美意識――。
それに比べてサムスン依存、ものづくり低下の韓国や土地問題・統治問題などの中国のかかえる弱点。

日本人はつくづく「満点渇望民族」「減点民族」だというのは全くそのとおり。

素直に反省すべきは反省すればよいし、構造改革も不可欠だが、伊藤さんのいう「Japan is cool(かっこいい)」という潮目を大事にしたい。


「あやつられた龍馬」.jpgなぜ下級武士の龍馬が、あれほどの活躍ができたのか。長崎が、大きな拠点となり、トーマス・グラバーはいかなる働きをしたのか。龍馬のみならず、幕末の志士たちと諸外国の交流がいかに親密に行われたか。
とにかく、背後にフリーメーソンがいたと加治さんは謎ときをし、そして、龍馬暗殺の真相を推理している。綿密な取材にも、内容にも驚くが、世界からのパースペクティブで幕末と明治維新を観ることの重要性を示してくれている。


「黒船以降 政治家と官僚の条件」.jpg中身の濃い、しかも自由で率直な語らいは面白く、圧倒される思いだ。尊王攘夷、なかでも攘夷思想が、黒船以降、明治をも含めて基調音として奏でられたことがよくわかる。歴史の表舞台に出てくる血気にはやる若者のなかで、バランスがとれ、わきまえた知性・理性をあわせもつリーダーが、煩悶しながらもいかに踏んばったか、阿部正弘、榎本武揚、小野友五郎、立見尚文など好意をもって二人が描いている。

薩長がいつ倒幕になったか。その背後には、それぞれの歴史と地域性と伝統(たとえば直接行動と自己陶酔的な水戸、海のない会津に対して海に接する長州や薩摩より遡れば島津と毛利の出自)、佐幕派勢力の一橋慶喜、会津、桑名の「一会桑」への反発などを描き出す。竜馬のめざした徳川を中心とした共和制と維新を成した人々との違いなど、興味は尽きない。


060213「インド 巨大市場を読みとく」.jpgITをはじめとして急速に発展・躍進するインドは、アジアの一員としての位置付けを明確化したこともあり、まさに注目の的である。IT産業、医療・製薬産業、中産階級の台頭などはめざましく、インフラ整備、投資の拡大、中小企業育成などが直面する課題となっている。
中国、インド、日本が中心となるアジア新時代に対して、日印交流はきわめて遅れをとっている。リオリエント現象の加速化のなかで、日本の戦略がみえない。

「ヨーロッパの統合が、制度・政治主導なのに対し、アジアの統合は市場・企業主導だ」というように、アジアの経済統合に中産階級大国日本の役割は大きい。製造業のアジアでの分担というよりも、アジア全体で中産階級の台頭、つまり爆発的な消費市場の拡大現象が眼前にあるところにこそアジア新時代の本質がある。とくに、日本のハードとインドのソフトの協力とよくいわれるが、ソフトと文化の面でこそ「ジャパン・クール」の評価を得るという榊原さんの指摘はいい。

テレビに出る榊原さんはほんの一部分で、いつも話をしたり著作を読むと、榊原さんの「日本の文化・哲学性」への洞察に共感する。


「にぎやかな天地」.jpgまるで息の長い絵巻物のような感がした。知らずしらず喧騒とは全くかけ離れたリズミカルな静寂空間の中に入った。さらにまた、縁と天の世界に入り、「命の波の振動」と宮本輝さんが描く、生死一如、縁起の味わい深い自他不二の世界をかみしめる思いにひたった。見えない世界の律動を観てこそ人の生といえまいか。これらを「にぎやかな天地」というのはにくいほどだ。
勇気ある一念は悪鬼を善鬼に変え、運命を俗流の諦観に押し込めず諦(あきら)かに観る。

軽佻浮薄な衆愚の時代――しかし、その対極に手抜きをせず、じっくり何十年の時間をかけて滋味をつくり出す匠の心技によってつくられた本物の食品がある。こうした日本の発酵食品とそれをもたらす微生物の妙な働きを、縁起の人間の生死の世界に重ねて描く。

慌しい現代社会にはじっくり待つべき時間が欠如している。見えるものに幻惑されて見えざるものが観えない。今に流されて常住の時間をたたえられない。そんなことを感じさせるどっしりした心の作品だ。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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