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海保の人材育成、日本で
「政策プログラム」導入10年
11カ国参加、幹部78人が修了

アジア諸国の海上保安機関から幹部職員を日本に招いて研修を行う「海上保安政策プログラム」(MSP)の開始から今月で10年を迎えました。修了生は計78人に上り、海洋の安全確保に向けた人材育成の成果が表れています。MSPの取り組みを紹介するとともに、立ち上げ当初から関わってきた公明党の山口那津男常任顧問にMSPの意義を聞きました。
■国際法、救難防災など研修
■履修1年、親交深める機会にも
海上保安庁と政策研究大学院大学との連携プログラムであるMSPは、各国の海上保安機関から若手の幹部職員を日本に招き、海上保安分野の専門家を育成するための研修を実施します。国際協力機構(JICA)が宿泊施設の提供や生活面の支援を担います。
研修期間は10月~翌9月までの1年間。前期は政策研究大学院大学で国際海洋法などの基礎を学び、後期は海上保安大学校で救難防災政策や海洋警察政策など実務的な演習を履修します。海上で発生し得るさまざまな課題に対して適時・的確に対処できる高度な知識や分析・提案能力などを身に付けることをめざします。
2015年の参加国は東南アジアのマレーシアやフィリピンなど5カ国でしたが、現在は11カ国に拡大。24年には太平洋島しょ国のパラオから初めて留学生を受け入れました。日本の海上保安庁職員も毎年参加し、留学生と寝食を共にしながら友好関係を深めます。
修了生は自国に戻り、海上保安当局で活躍。フィリピン沿岸警備隊から参加したMSPの1期生は、歴代最年少で准将に昇進し、報道官として任務に当たっています。共に学んだ海上保安庁出身の同期生とは家族ぐるみの付き合いが続いているそうです。MSPを通して、海上保安分野における日本と各国の人的ネットワークが広がっています。
■公明、国会で訴え実現
MSPは、公明党が立ち上げを推進しました。2014年の国会質問でアジア諸国の海上保安機関の連携強化の重要性を取り上げ、15年2月には山口那津男代表(当時)が参院本会議で質問。MSPの前身で、民間資金のみで運営されていた海上保安庁の研修制度が終了したことを踏まえ、国費を投入して制度を継続し、海洋秩序の強化や地域の安定に日本が主導的な役割を果たすべきだと訴えました。
これに対し、当時の太田昭宏国土交通相(公明党)が「海上保安大学校に海上保安政策課程を創設する形で具体化する」と答弁し、同年10月からのMSP開始につながりました。
■周辺国との連帯を実感
山口那津男党常任顧問
インド太平洋地域の海上交通路は、アジアの経済発展のための重要な国際公共財です。アジア諸国の海上保安機関から幹部職員を日本に招き、人材のネットワークを構築することが海上交通路の安全性を高め、地域の安定と平和を保っていくことにつながると考え、日本政府が主導する研修プログラムの継続を提案しました。

MSPの開始後は、毎年の研修生との交流を重ね、2023年と24年に党東南アジア諸国連合(ASEAN)訪問団としてフィリピンやマレーシアを訪れた際には、現地で活躍する卒業生と再会することができました。
感銘を受けたのは、卒業生たちの「日本で学んだことを生かし、国際法に基づいて『法の支配』を徹底して貫くという精神で仕事に臨んでいます」「隣の海に日本で共に学んだ仲間がいることが心強い」との言葉です。MSPが期を重ね、各国で中核となる人材が育ち、周辺国との連帯が広がって"縦と横のネットワーク"が築かれていることを実感しました。
軍事衝突を防ぎ、実質的な平和をつくる取り組みを、これからも日本が主導して広げていってほしいと思います。
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