nihonjin.jpg「第7回世界価値観調査から見えるもの」が副題。この調査は、世界各地の個人を対象に、1981年以降おおむね5年おきに実施されている世界最大規模の意識調査。世界120もの国や地域で、同じ質問をする形でこの40年間で7回、世界の人々の意識を調査してきた。調査項目は290に及び、内容は生活意識や労働意識、政治意識、ジェンダー意識など多岐に渡っている。時系列データの蓄積が特徴であり、日本では電通総研が日本代表として参画している。

2つの大きな価値観シフトが世界各国で確認されている。一つは「伝統的価値観」から「世俗的価値観」へのシフト。もう一つは「生存重視」の価値観から「選択の自由と自律性に重きを置く自己表現重視」の価値観へのシフトだ。生存重視から自己表現重視ヘのシフトはこの50年世界に広がっている。また各国で「格差と分断」が生じていることや、結婚や家族、ジェンダーと性的指向に関する価値観に劇的な変化があり、環境問題意識も世界的に高まる傾向が確認されている。日本においてもそれは実感するところだ。

幸福感や生活満足度については「日本は88.3%が『幸せ』だが先進国の中では相対的に低めである」「非常に幸せが29.9%、やや幸せが58.4%となっている」「日本の生活満足度は満足が2020年は77.2%2005年の80.9%に次いで高い」となっている。仕事への意識は変化している。「仕事」について「重要」「やや重要」の割合は81.3%であり、77カ国中71位、「生活において仕事よりも余暇時間を重視する傾向」が見られる。日本人は勤勉を尊び、組織への帰属意識が強いという一般的なイメージとは合致しない。「働くことがあまり大切でなくなる」という変化に、年齢の高い人は「悪いこと」と思うが、若い人は「気にしない、良いこと」が増えている。仕事優先と言う価値観が弱くなっている日本人ということだろう。

伝統的価値観の指標には「ナショナルプライド」や「権威の尊重」なども含まれるが日本では低い。「日本人としての誇りを感じる」との回答は78.9%77カ国中67位、「権威や権力が尊重されることは良いこと」との回答はわずか1.9%77カ国中77位となっている。また生活において政治は「重要」とする回答は65%77カ国中6位、政治に「関心がある」との回答は60.1%77 カ国中8位と高い水準にある。しかし若年層ほど政治ヘの関心は低く、1829歳で38%30代や40代でも半数を切る状況だ。さらに注目すべきは、デモへの参加経験が5.8%77カ国中69位、政治に関するネットでの情報検索経験は16.8%47カ国中29 位、ネットやSNS上で政治的・抗議活動の組織化経験も0.8%45カ国中42位。政治行動は極めて低いことが明らかになる。

地球環境問題については意識が高まっているが、「経済成長率が低下して失業がある程度増えても、環境保護が優先されるべき」との設問に対して、環境保護が優先されるべきだとの回答は、77カ国中52カ国で過半数を占めているが、日本は74位と低位になっている。

最近問題となっている日本人の宗教の認識については、「神の存在を信じる」との回答は39.5%75カ国中72位、「自分は信心深い」は14.4%77カ国中77位の最下位。「生活で宗教が重要だと思う」は14.7%77カ国中76位となっている。宗教の認識は極めて低い。

安全保障の論議が行われているが、国際比較で日本は際立っていることがある。「仮に戦争が起こる事態になったら、自分の国のために戦いますか」という質問に対して「はい」と答えた人は2019年の時点で13%と日本は低く、国際比較では最下位だった。さらに見逃してはならないのは、「わからない」という回答が38%で国際比較で極めて多いという事実である。戦後長らく戦争のない世界に住み、考えたことがない、あるいは判断がつかない人が多いからではないか。今年のウクライナ戦争で変化があるのだろうか、調査を知りたいところだ。

日本は民族性もあろう、歴史もあろうが、「環境か経済か」についても「わからない」が33%と多く、国際的にも抜きんでている。このドラスティックに変化する世界の中で、この点をどう考えるかも、重要なことだと思う。


kokorogayutakani.jpgふだん何気なく使っていた言葉の意味がわかる。「言葉の解説」の本は多いが、この本は言葉の成り立ち、そこに込められた日本文化の知恵や信仰心、自然との触れ合い、季節の変化の中で、緩やかで優しい日本伝来の言葉の成り立ちがふわっと湧き上がってくる。とてもいい本。

「もみじ――もみず、揉んで出る」「縞の模様――南の島から来た、島もの」「ため息――溜める」「炊きたて――その動作が終わった直後」「打ち合わせ――雅楽の世界で太鼓などを打つ音に笛や琴が合わせる」「ついたち――月が立つ」「しおり――枝折リ」「わかる――分かる、頭の中で整理して分岐して別々になる」「いただきます、ごちそうさま」「暮らし――日が暮れるまで時を過ごす、日暮れは毎日やってくる」「住む――澄む、安心して休むことができて頭の中が澄む状態」「いらいら――心にトゲ」「道――みは敬意を表す接頭語。自分たちが歩く筋状の土地は『ち』。大切な場所へ通じる道、道は目的地に至るコース。コースがわかる、分岐点のたびに選ぶもの」----

「行ってきますと、行ってらっしゃい」「ふんわり、ひんやり――溜めを作る、ん」「おおやけ――三宅の宅()、大きな家」「みずみずしい――水を使って命の輝きを表現」「謎――この世はわからないことだらけ、なんぞなんぞの好奇心」「生きがい――代わり、代わりに得る効果や報酬」「正しい――ただから生まれた言葉。そっくりそのままで他のものが入り込んでいない」「ゆるす――漢字の許すは厳しすぎるので、日本語では『心をゆるめる』と、心を広げる人生のヒント」「すみませんと、ごめんなさい――借りを返せず気が済みません。免じるがごめん。おゆるしください。ごめんなさいは和解の言葉」「大丈夫――立派な大人。多くの日本人にとって、濁点がついている文字の発音は、重く強く響く。ゴロゴロ、ビュービュー、だいじょうぶ」「怒りんぼう、甘えんぼう――僧侶が住む坊。可愛さを表す言葉」「あきらめる――明らかにする」・・・・・・。

ごく普通に使っていた言葉だが、なんと美しく味わいがあることか。どんどん言葉がおかしくなっている今、こんな本を若者も大人も読んだらどうかなと思う。


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『KomeSTA! RADIO』に出演しました。

●第5回「結党60年へ 青年世代に託したいこと」~前半~
「大衆とともに」の立党精神などについて、政治への関心が薄くなりがちと言われる若者の人に、わかりやすく話をしました。

下記URLのホームページ移動後、『KomeSTA! RADIO』の欄から、お好きなサイト(Spotify、Apple Podcasts、Google Podcasts、Amazon musicなど)へ移動して頂くと聞くことができます。
https://dcontents.komei-shimbun.jp/komesta


saigairettou.jpg「女川町の奇跡 防潮堤のない復興まちづくり」が副題。東京都で道路、橋梁、下水道、まちづくり、河川事業などに従事。特に都市計画・区画整理、スーパー堤防などを現場に入りながら実現してきた土木の専門家の土屋信行氏。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた女川町に入り、「海の見えるまちづくり」「町をまるごと区画整理」「被災した市町村の中で唯一の防潮堤のない町・女川」を造り上げた。防潮堤の後背地を低いままで非居住エリアとするところが多いが、女川町は防潮堤と同じ高さまで盛り土をして商業ゾーンを築く。基準となる「L 1(レベル1)」の高さのスーパー堤防方式で街を造り、住まいの住宅はレベル2の高台に造る。女川町ではレベル14.4メートル、レベル21718メートルとなる。当時、防潮堤はレベル1を基準として各市町村で高さを決め、高台まちづくりは防災集団移転促進事業で行い、高齢者に配慮した災害公営住宅をできるだけ早く造る、これが基本であった。土地区画整理事業には、困難が多い。スーパー堤防でも、はなから反対、とにかく反対だというところから始まってしまう。完成すれば喜びと感謝が溢れるものだが、地元の方の人生を賭けた選択と決断、支援があってできるものだ。「女川町の防潮堤のない復興まちづくり」ができたのは土屋さんの経験に基づくリーダーシップと、それに応じた女川町の人々の熱意によるものであることは間違いない。どれほど困難な項目があり乗り越えてきたか、本書は貴重な記録である。

「災害列島の作法」が表題だが、古来から近代に至るまでの自然との戦いの中で培われた知恵と技術が日本にはある。防災の作法、まちづくりの作法、河川をなだめいなすという日本伝来の作法等があり、本書に書かれている。土木はシビルエンジニアリングといい、社会のため未来のために、ひたすら尽くす。それが誇りだ。私も土木屋の一人だが、苦労と志に共感する。


miraino.jpg「サイエンスの世界にようこそ」「科学は人の営み」「こんなに楽しい職業はない」「サイエンスは社会的な存在である」――。ノーベル賞等を受賞、基礎科学の第一線を走ってきた研究者の2人が語り合う。

「こんな役に立たない研究をしていていいんでしょうか」「失敗しないためにはどうすればいいですか」――今の社会は、「成果」が求められ、しかも短期で、どの分野でも。この風潮こそ最大の問題と警鐘を鳴らす。「こんなに楽しい職業はない」「研究者の醍醐味――世界で自分だけが知っている」「研究は面白いから、選択は面白い方を」「一番乗りよりも誰もやっていない新しいことを」「効率化し高速化した現代で、待つことが苦手になった私たち」「安全志向の殻を破る」「解くではなく問うを」「科学を文化に」と語り合う。社会も企業経営も大学などの研究も、短期の成果を求めるようになっている。株主資本主義も大学などの研究費削減も、短期の成果をますます求めている。日本の基礎研究が細る所以である。すべてに余裕がなくなっているのだ。「役に立つ」の呪縛から飛び立とう、と様々な角度から強調する。

寺田寅彦は「科学者になるには『あたま』がよくなくてはいけない。しかし一方でまた『科学者はあたまが悪くなくてはいけない』という命題も、ある意味ではやはり本当である」と言ったという。「いわゆる頭のいい人は、いわば足の速い旅人のようなものである。人より先に人のまだ行かない所へ行き着くこともできる代わりに、途中の道端あるいはちょっとした脇道にある肝心なものを見落とす恐れがある。頭の悪いのろい人がずっと後から遅れてきて、わけもなくその大事な宝物を拾っていく場合がある」「頭のいい人は見通しが利くだけに、あらゆる道筋の前途の難関が見渡される。そのためにややもすると前進する勇気を阻喪しやすい。頭の悪い人は前途に霧がかかっているためにかえって楽観的である」「頭の悪い人は、頭の良い人が考えて、だめに決まっているような試みを、一生懸命に続けている・・・・・・」と面白いことを言っている。また永田さんは「よいお友達というより『へンな奴』を友人に持つほうがはるかに面白いと思っている。へンな奴とは、自分にはないものを持っている奴ということでもある」と語る。大隅さんは、鷲田清一氏が紹介している言葉を引き、「ちょっと変わったヤツが必要なんですよ。優等生ばかりを集めていてもいい酒になりません。ブレンドウィスキーはいろいろな原酒を混ぜて造る。その時欠点のない原酒ばかり集めて造っても、『線が細い』ものにしかならないが、変わり者が混じることで初めて、ハッとするいいお酒ができるというのだ。研究者の世界と同じだと思わずうなずいてしまった」と言う。面白い話だ。「科学の価値も、芸術やスポーツ等と同じように、役に立つかという視点ではなく、未知のことが解明されることを人類の共通の資産として純粋に楽しむ社会であって欲しいと思う。私が『科学を文化の一つに』と考える真意である」とも言う。そして繰り返し「『役に立つ』との呪縛を解き放ち、知的好奇心から出てくるものが基礎科学だと思う」と二人は言う。社会の厚み、人間存在の深さが、基礎研究だけでなく試されている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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