「台湾有事のリスクと日本が果たすべき役割」が副題。台湾をめぐる米中軍事衝突は世界戦争へ直結する危険がある。「台湾をめぐる米中戦争の可能性は『起こりうるが回避も可能、もし起きたら世界が終わる』というのが現時点の評価だ。関係諸国の間で、それが、『世界の終わりは避けられないが、そんな未来はありえない』に変われば、筆者は枕を高くして眠れるだろう」と結論する。
「インド太平洋地域の内外で、多くの国が終末戦争の危険を減らそうと力を注いでいる」と、著者はその様子を伝え、各国の努力の評価を行い、抑止戦略の相関図を開示する。抑止努力は、「自由で開かれたインド太平洋vsアジアの安全保障はアジア人の問題だ」「台湾は中国人が解決すべき『国内問題』であるvs台湾は安定と人権と制海権をめぐる地域と世界の問題だ」との言説の報酬は危険な誤解を招きかねない。「台湾をめぐる紛争は、通常兵器しか使わない局所的な衝突なのか、それとも世界への波及が避けられず、核の使用まで想定する必要があるのか」――その損失と危険は容認しがたいと言う。過去の冷戦と違い、今の世界は2つのブロックにしっかり分かれているわけではなく、緊密かつ複雑な関係が絡み合っている。「今求められているのは、従来型の抑止戦略に加えて、その良い面を現代の外交と政治に再現することだ。新しい冷戦を始めなくとも、かつての冷戦から外交の枠組みが持つ価値を学べば良いのである」・・・・・・。
バイデン大統領の介入発言が「台湾とウクライナのリスクの差を鮮明にした」が、著者は米国が断固として介入する意思を持てるかどうか、それが台湾有事の焦点になると言う。米国が中国と向き合う意思を強固にし、日本が新防衛方針に沿って抑止力を高め、同盟国・パートナー国との連携を促進することの重要性を指摘する。アジア諸国のそれぞれの事情の違いを説明している。日本の安全保障政策と政局との関わりについては、正確ではない。