読みながら思うことが溢れた。しかし改めて安倍晋三総理が、いかに戦略的に戦い続けたか。多くの仕事をしたか。安倍政権に関わった人が、激変する世界と社会の中で結束して戦い仕事をしたか。そして各テーマを設定し、船橋さんが徹底取材し、それを立体的に組み上げて、熱が伝わるドキュメントに仕上げた力量に感心する。「彼は迫り来る『歴史のリアル』と戦った」と言う。
「母の洋子は、安倍を『宿命の子』と呼んだ。安倍自らも、心の底に、そのような使命感と歴史観を秘めていた。・・・・・・『その先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません』戦後70年首相談話に込めたあの一言は、安倍の心の叫びでもあった」とあるが、「宿命を、日本を背負う使命に転換して戦おうとした」のだと思う。
<下>は「外交」が生々しく描かれる。「プーチン」「習近平」「トランプ」「金正恩」「アメリカ・ファースト(トランプなど)」「自由で開かれたインド太平洋(モディ、ターンブルなど)」「G7 vs.ユーラシア(メルケル、マクロン、キャメロン、オバマ、トランプ・・・・・・)」の各章は、いずれも息づまる攻防。冷静な国際会議や外交交渉というよりまるで格闘技のような攻防だ。その中で安倍晋三総理が躍動する。日本の総理でかつてない存在感を勝ち取ったのだ。あの有名なトランプにメルケルが迫り安倍晋三総理がその真ん中で腕組みをする写真。その真実の意味も・・・・・・。
その後に「天皇退位と改元」「パンデミックと退陣」などが描かれている。「戦略性」と「リアリズム」で新たな日本の未来を切り開こうとした安倍晋三政権のエネルギッシュな姿が掘り起こされている。とてつもない船橋さんの力の著作。