2030-2040.jpg都市部でタワーマンション建設ラッシュ、郊外では新規の住宅地開発、空き家が急増し約950万戸というのに、今なぜ、住宅は高騰し入手困難になっているのか。2023年の東京23区の新築マンションの平均価格は11483万円だという。首都圏の20244月の中古マンションの成約価格の平均は5095万円で5年前の1.5倍、中古戸建は4035万円で5年前の1.3倍だと言う。歴史的な円安を背景に、投資家や外国人による不動産購入が旺盛になっていることも物件価格上昇に拍車をかけているのだ。

住宅の「数」は十分あるというのになぜ入手困難か――。それは高額になりすぎて「手が出ない住宅」と、古さや立地が悪いなどの理由で「手を出したくない住宅」ばかりが増加し、今の住宅実需層のニーズに合わなくなっていることが大きな原因だと指摘する。

大都市では都市化し切った状況で、新たな開発できる土地=開発余地が少なくなってしまっている。再開発という事業手法自体が高コスト構造であること、かつ建設費も上昇中であること、中古マンションをリノベーションすれば良いが、区分所有者同士の合意形成という高いハードルがあるためなかなか実現できないなど、住宅の入手困難・高コスト化の要因は続く。

今後、団塊世代の持ち家の大量相続が発生する。「一都三県では、戸建住宅の方が先行して2030年頃に、そして中古マンションは2040年頃から大量に相続が発生する」「ミクロに見ていくと、交通利便性が高く、想定される浸水リスクが低く、住環境の良好な街が多くある」として、本書では首都圏、東京23区のエリア別に具体的に紹介する。

「高いコスト化する再開発(容積率の割り増しの多発が一極集中を助長、再開発でタワーマンションばかり建つ理由、郊外の駅前にタワマンは必要ですか?)」「中古マンション編:住宅の流通量が増加する駅」「中古戸建編:住宅の流通量が増加する駅」は具体的で興味深い。

大事な事は「今の再開発など高コスト化する都市づくりからの脱却」だと言う。そのためには「『アフォーダビリティ』を都市政策の論点に」「過度な『共有化』『区分所有化』の抑制」「建築物の終末期を視野に入れた政策の原則化(近年の荒廃した空き家、廃墟マンション、廃墟ホテル、工場、遊園地・・・・・・、解体費などをどうする?)」「『都市再生』から『生活圏の再生』へ(2030年頃からの相続見込みのない戸建住宅の大量発生をチャンスに変えてどう生かすか。高コスト構造の分譲マンションの終末期の困難さを考えると、戸建住宅の再生こそ重要)」「政策課題に応じたガバナンスの構築(都市政策・住宅政策・土地政策などを総合的に解決していく柔軟かつ機動的なガバナンス)」を提唱している。本当にその通りだ。時間が経てば「超難問」はさらに加速する。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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