singatainfure.jpg「日本経済を蝕む『デフレ後遺症』」が副題。「物価も賃金も金利も上がらないものだ」という3つのノルムに喘いできた日本。やっと物価が上がり、賃金も上がる日本になり、デフレから脱却したが、物価を上回る賃金とならず、実質賃金が低下している。「指数上でデフレは脱却できていても、人々のデフレマインドは根付いたままであり、個人消費は非常に弱いままだ」「ウクライナ戦争をきっかけとした世界的なインフレや円安が原因となる輸入品の上昇というコストプッシュ型のインフレが起きている」――この「新型インフレ」をどうするか。「新型インフレ」を需要サイドに起因するディマンドプルに転換するには、「実質可処分所得を持続的に増加させる一方で、国内の供給力を高めることが必要だろう」と分析・提言をする。

「経済のエンジン・個人消費が停滞中」「企業業績は絶好調のカラクリ」「大企業の労働分配率は、過去最低に(多くの企業は、存続と成長のために投資を優先している)」「賃上げの恩恵が乏しい就職氷河期世代は苦しい」「原材料費やエネルギー価格など、供給コストの上昇が原因で起こるコストプッシュ型のインフレとなっている」・・・・・・

「デフレのトラウマーー日本を蝕む『不況体験』」――。デフレマインドで「貯蓄志向の強化」「安定志向」。氷河期世代の救済策は極めて重要。

「新型インフレの正体」――。物価も上がる。株価も上がる。名目賃金も上がる。しかし、「実質賃金が上がらない。したがって消費は増えず、人々はお金を貯め込み、日本経済全体の停滞が続く」と言う。新型インフレの今、大事なことは「積極財政(世界的には積極財政の潮流)」であり、「日銀の金利引き上げは拙速」と指摘する。リーマン・ショックをアメリカが乗り越えたのは「金融システムの安定性確保」と「政府の役割遂行(積極財政)」と言い、「デフレ脱却にアベノミクスは貢献した」と評価しつつも、ニ度の消費税引き上げを悔やむ。実は安倍総理自身がそうだった。「アベノミクス後――日銀動向、金利政策、家計資産の実態」で分析している。

「経済政策は『健全な経済成長』を目的として行われるが、日本は需要が拡大しにくい。日本のお金は家計や企業の蓄えとなってストップしてしまうのだ」と、デフレマインドのままで、経済が止まっていることの打開策を示す。金融政策や財政政策を積極的に活用する「高圧経済」。インフラ投資や人材投資などの財政政策、エネルギー対策も重要だ。過重労働を抑える「働き方改革」は必要であっただろうが、今再び「労働時間に流動性を」との改革を起動させなければならないと言う。そして「処方箋は『支出支援』『消費支援』」と具体的に示し、「効果的な経済対策としての補助金制度」「持続可能な社会のための『格差是正』」など広範囲に示す。

物価も賃金も動き出したが、デフレの後遺症は深く執拗に張り付いている。それを剥がす熱と力が大切だ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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