「"五輪を喰った兄"高橋治之と"長銀を潰した男"高橋治則」が副題。
あのバブルのなかホテル・リゾート開発事業などで、資産1兆円を築いた「イ、アイ、イ」の高橋治則。バブル崩壊とともに、長銀による支援が打ち切られ、彼の影響下にある東京協和信組なども破綻、95年6月、背任容疑で逮捕される。2005年7月、最高裁の判決を待っている最中に亡くなる。私と同じ1945年生まれ。その兄が、電通時代からスポーツマーケティングで敏腕を振るい、東京五輪組織委員会の理事となり、現在汚職で裁判中の高橋治之。
「バブルの申し子と呼ばれながら志半ばで逝った弟と、スポーツビジネスの"フィクサー"として、電通で出世の階段を駆け上った兄。二人にとって『イ、アイ、イ』グループが作り上げてきた帝国は、誰にも侵されたくない聖域だった」「『俺たち兄弟は二人で一大コンツェルンを確立しようと話し合っているんだ』 治則は事業を始めた早創期に、こんな言葉を口にしていたことがあるという。----そして兄自身は飽くなき上昇志向で、次々と成功を手にしながら、自らが作り出した強烈な磁場に翻弄されていった。もう二度と日本にこんな兄弟が現れることはないだろう」と描いている。
何もかも失った戦後、必死の復興、高度成長からバブル、そしてバブル崩壊、90年代後半の銀行・証券等の破綻、さらに長期にわたるデフレ・・・・・・。戦後80年の今、私たちも80歳になる。人の人生は、時代とともにあり、時代の空気を吸いながら生きてきた。右肩上がりと言うよりも、チャレンジ精神は時代の空気を身にまとったものだろう。失敗も多くなる。ケータイもネットもない。熱量が大きかった時代なのだ。
本書には、多くの政治家や官僚が登場する。皆、知っている人ばかりで、亡くなった方もいる。なぜか笑顔のとても良い人が多いような気がした。