話題を呼んだデビュー作「禁忌の子」に続く第二弾。救急医・武田の元に搬送されてきた自分と瓜二つの溺死体から自身との関係を探る前作。武田は旧友で医師の城崎響介と共に調査をするが、今回はその城崎と研修医の春田芽衣が主人公。
研修医の春田は実習で、城崎は過疎地医療協力で派遣。2人は北海道の温泉湖の近くの山奥にある更冠病院へ向かう。車で向かう途中、病院一帯はとんでもない濃霧に覆われ2メートル先も見えない。やっとたどり着くが、濃霧で病院は誰も出入りできない状況。そんななか、春田が中学のバスケ時代、大変お世話になり、会うのを楽しみにしていた病院のスタッフ・九条環が変死体となって発見される。硫化水素中毒死の所見。城崎は「殺された可能性が極めて高いと思ってる」と言うのだった。
さらに、霧に閉ざされた翌朝、大地震が発生。加えてその影響で、病院の周囲には硫化水素ガスが流れ込んでしまう。霧と大地震での建物のダメージ、硫化水素ガス。霧が晴れない限り、脱出する方法がない――まさに、白い檻。しかも死の硫化水素は地下にたまり、そして1階、2階へと上がってきた。
さらに、八代院長の切断された首がクローゼットの中から発見。入院患者射殺事件が続いて起きる。わずか三日間の「白い檻」の中で。城崎と春田は死の迫るギリギリの中で、かつてこの病院の産婦人科で起きた母子死亡事故に絡む真相に迫っていく・・・・・・。
過疎地医療の厳しい現実とその歪み、災害下で患者を守り生き抜こうとする医療従事者たちの極限の戦いが悲しいまでに伝わってくる。若き現役医師による本格ミステリの力作。