1764633747633.jpg「増え続ける外国人とどう向き合うか」が副題。訪日外国人旅行客が今年、ついに4000万人の超え、在留外国人数も昨年末376万人、昨年1年で35.8 万人増加している。これに対し、治安や社会保障に関する不安の声も多く、「排外主義」まで台頭している。実際はどうなのか。本書は、これらの風聞の誤りを、エビデンスを基に指摘、移民政策の歴史と未来について考察する。現代日本の移民をめぐる最重要課題を明確に捉え、これからの日本の外国人問題のあり方を指し示す極めて重要な著作だ。

言われている風説は誤解だらけ。「地域の治安を悪化させるクルド人など。『経営・管理』の在留資格で滞在し、日本の義務教育や国民健康保険、高額療養費制度を濫用するリッチな中国人。出稼ぎのために来日する留学生。ゴミ出しや騒音問題を起こす外国人」などは、およそ荒唐無稽だと指摘する。

「今3%の日本だが、やがて10%になったら大変なことになる」と言うのも誤りで、先進国の外国人の割合は平均14.7% (フランス13.8%、米国14.5%、英国15.4%、ドイツ18.2%、カナダ22.0%)。「少子高齢化に直面する先進国の中で、日本だけは『隠された人口ボーナス』がある国」と指摘する。

「日本は『移民政策が不在』でなし崩しの受け入れがされている」ーー実際は「機能的・制度的に、日本は移民政策を有している。日本は『労働移民』を中心に永住型・ 一時滞在型双方で国際的に見ても相当規模の移民を受け入れている。他国と比較して、労働中心の永住型移民の占める割合が大きく、むしろ日本はリベラルな『労働移民国家』と評価される」「一時滞在型移民についても、技能実習など研修生、企業内転勤、留学生の受け入れが大きく、世界第6位の規模となっている」「日本は永住型、一時滞在型を合わせて年間約36万人の移民を受けており、先進国中第7位の規模となる」と言う。日本は移民政策を取らない特殊な国ではなく、国連の基準に基づけば移民政策の整備状況は進んでいる。労働移民を中心に据え、永住への道を特定技能制度等で開いている評価されるべき国だと言うのだ。

日本の歴史を見ると、「ハイスキル人材の受け入れ拡大(技術・人文知識・国際業務として1989年改正)(2023年から特別高度人材制度に拡大)」「技能実習制度の創設(1993)」「特定技能制度(2019)」などで拡大。特定技能制度は特定技能2号への移行によって在留期間の更新に上限がなくなり、戦後、「管理と排除」から始まった入管行政が「人手不足への対応と経済成長重視」に大きく変化したと言う。「技能実習制度から特定技能制度を通じて『技能形成を通じた永住』という国際的に見ても珍しいスキームを生んだ」「人口減少が本格化する2000年代以降に、本格的な労働移民政策を日本は欧米と違い、職の奪い合い、失業による貧困、社会保障への圧迫といった問題は、構造的に起こりにくい」と指摘する。

「日本は成長しない『選ばれない国』になる」と言うのも誤り。国際移住は「意欲ー潜在能力モデル」が最も包括的理論で、「貧しいから先進国に行く」ではなく、堅調な経済成長を遂げるなかで、個人の意欲や能力が高まっている故に、先進国を目指す。「日本の人気はアジア諸国で高く、特に経済発展が進む国や高学歴層からの支持が高い」と分析している。「アジアから産油国と日本に向かう」現実があるが、「産油国へは出身国の経済水準が高くなるほど急速に低下する」と言う。アジア諸国からは米国に次いで日本に移住する人気が高いと言うのだ。「選ばれない国どころか、人気を高めている日本」「アジアから来る留学生や技能実習生は、学歴の低い貧しい人たちではなく、人生のチャンスを掴もうとする勢いのある新中間層出身」「中国人の『日本侵略』も間違いで、国境を越えてチャンスをつかもうとする起業家精神の表れ」だと言う。

空前のペースで増加する国際移住。ハイスキル人材だけでなく、あらゆるスキルレベルでの人材不足が深刻化する現在の世界ーー。「排外主義が民主主義を破壊する」と言い、エビデンスを蓄積・整備し、効果的な政策の立案の必要性が心に迫る。「増え続ける外国人にどう向き合うか」ーー圧倒的説得力を持つ最重要の著作。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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