戦争、異常気象、AIの加速による社会変化、経済格差の増大と貧困・・・・・・。この現代の問題に対処するため、新たな社会契約、まさに「新しい啓蒙」が必要だ。この新しい啓蒙は、「道徳的な人間の進歩を、モノやサービスの社会経済的生産手段と、さらには豊かさや繁栄と早急にリカップリング(再統合)しなければならない」「我々が目指すべきは、道徳的価値と経済的価値のリカップリング、すなわち倫理資本主義だ」と言う。新自由主義や、停滞と貧困をもたらす「脱成長」に活路はない。資本主義の行き詰まりを打開するのは倫理である。倫理と資本主義をリカップリングした倫理資本主義だと言う。善、倫理、資本主義の本質をアダム・スミス、カントらの哲学・思想の根源から掘り起こし、倫理資本主義を提起する。
哲学的だが現実的でもある。「資本主義のインフラを使って、道徳的に正しい行動から経済的利益を生み出し、社会を改善することができる。道徳的に正しい行為によって利益を得ることは、富を求めて、恣意的で強欲に行動するより、経済的サスティナビリティが高く、最終的にはより大きな利益につながる」「入れ子構造の危機に直面する時代の不確実性や複雑性への正しい対応は、体制変革や革命ではなく、様々な改革を高度に組み合わせていくことだ」「倫理資本主義とは、資本主義の社会経済インフラが道徳的進歩への寄与度という観点から評価される(ジェンダー、人種、経済的不平等、健康、クリーンエネルギーへの移行、政治的自由・・・・・・)ように、剰余価値生産という社会経済活動を倫理的にアップデートする必要があるという考えだ」「資本主義を克服する考えではなく、必要なのは剰余価値生産を道徳的進歩とリカップリングさせるという改革だ」・・・・・・。
そして、「経済的剰余価値生産と道徳的善には『真の利益』という概念のなかで相関性がある。両者の均衡点をカントの概念にちなんで『最高善』と呼べば、『最高善』とは、経済的価値と道徳的価値の均衡点である。それは真摯に道徳的配慮を持って財を生産・分配することで、経済活動が前向きな社会変化に積極的に寄与する状況だ」「消費主義社会の克服と倫理資本主義の実装として、SDGsのあらゆる側面に投資する。人間の社会経済的発達の次なるステージヘ積極的に未来を作っていこうとする」と言う。
「応用編」として、「次世代の企業に倫理部門の設置を義務付ける」を挙げる。それを率いるのは、最高哲学責任者(CP O)。社内の組織と対話・協力し、真の利益のためのアイディアを生み出す研究開発部門となる。2つ目は、「子どもへの選挙権付与」のアイディア。子どもの想像力が未来を変える、彼らの想像力の可能性を解き放つべきだと主張する。3つ目は、「A Iを社会的技術として再定義すること」だ。AIの開発と使用については倫理的問いが喫緊の課題。AIを持続可能な未来創造のエンジンにするためのイノベーションと、その倫理的な研究が急務だ。
帯には「天才哲学者はいま何を語るのか」とある。斉藤幸平監修、土方奈美訳、昨年出版された著作。
