20110510-book.JPG  東大の先生が高校生への5日間の歴史の講義。小林秀雄賞。日清戦争から太平洋戦争まで、普通の日本人から世界最高の頭脳までが、なぜに戦争に突入したの か。これまでの歴史書と違うのは、加藤さんが、その時代の中に身を置いて、歴史の渦中で考えようとしている姿勢が感じられたからだと思う。こういう角度の 近現代史への迫り方は貴重なものだ。朝鮮半島をめぐっての日清戦争、それを経て朝鮮半島をめぐる日露戦争。そして韓国併合、ついには対華21カ条要求。世 界の中へ入って行こうとする日本、しだいに起きる日本への世界の警戒、パリ講和会議・ヴェルサイユ条約・国際連盟・・・・・・。そして満州事変と日中戦 争、その間のいくつかの見誤り――。加藤さんは、その中の人物の心象風景をもていねいに追いつつ語る。人は時代の中に結局、生きてしまうものだが、バラン スある信念を放棄してはならない。


20110506-book.JPG   中勘助(明治18年生まれ)27歳の作品。東京朝日新聞に漱石の「行人」中断のあと大正2年4月8日から6月4日まで連載され、後編も大正4年に連載され る。明治20年代の東京歳時記ともいえる四季、人の交わり、淡い恋心を、虚弱で鋭敏な感性をもった主人公が、子供の頃の記憶をたどる形で、儚くかつ清冽に きれいに描き出す。

  昭和20年代にはまだそうした日本の社会があった。なつかしい。私の田舎の(三河)の言葉が、神田や小石川に出てくるのは、なぜだろうか。いろいろな思い を心に浮かべさせてくれ、声を出してたどるように読んでしまう。それは子どもの心にうつる世界をピュアに描き切っているからだろうか。それとも明治の終わ り、政治・外交の激動の時代の渦中にも、知性の軸がしっかりしているからだろうか。
  最近、あっちこっちで、中勘助の「銀の匙」を耳にする。読んだのはおそらく学生時代以来だと思う。


20110502-book.JPG  お嬢様刑事が担当する難事件を、頭脳明晰、毒舌家の執事がいとも簡単に解決してしまうユーモアミステリーの短編集。第8回本屋大賞のベストセラー。

  麗子と執事の影山、そして風祭警部の3人のやりとり、会話は軽快で面白く、あたかも掛け合い漫才。いま風といおうか、テレビ風といおうか、マンガ風といおうか。受けるのはよくわかる。


20110428-book.JPG  高橋源一郎さんの「さようなら、ギャングたち」は1981年だというから、もう30年。注目していた。内田樹さんは、「下流志向」「街場の教育論」「日本辺境論」から「街場のメディア論」まで、かなり読んできた。

  この対談はその時、その時の政治と日本社会の心象風景を、それこそコロキアルな言語で語っている。右肩上がりの時代を生きて、頑張る我々。
し かし、「縮んでいく日本」「静かな日本」「人口の減る日本」「縮みながらも文化的に暮らせて、自尊感情が維持できて、国際社会の中でできる範囲で立派な役 割を果たせる国になれれば、それで上等じゃない? なのに、相変わらず"右肩上がり"だ」――世界に先駆けて、日本が示せるものを、情理を尽くして熱く語る政治家が望まれている、と言う。


20110426-book.JPG  昨年12月発刊の書。河田さんは復興構想会議のメンバー。活躍が更に期待されるが、京大土木の1学年後輩にあたるようだ。東日本大震災に襲われ、首都直下、東海・東南海・南海地震に備えなければならない今、「津波」を余すところなく語る本書は必読。

  50cmの津波でも0.3トン強の力で人は転倒する。発生の規模・場所(波源域)、受ける地域によっても異なるが、津波は何波も続き、反射もあり、6時間 は要注意。今回のように第二波、第三波が大きいとも限らない。固有周期、共振もある。「津波と高潮と高波は違う」「遠地津波と近地津波がある」「水深が浅 くなると津波が大きくなる浅水変形が起きる」「情報があってなぜ避難行動に結びつかないか」「東京に津波が来たら――地震と津波と液状化と石油タンク破損 による火災・有毒ガスと各流入河川での橋脚等落下」「安全優先の津波防災施設・装置のみでなく、活気ある町・企業活動・経済基盤強化への復興計画を」―― 等々。やさしく解説してくれる。
「減災社会を築く」「避難すれば助かる」「それには津波の知識の絶対量を増やす」という河田さんの思いが伝わってくる。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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