東大の先生が高校生への5日間の歴史の講義。小林秀雄賞。日清戦争から太平洋戦争まで、普通の日本人から世界最高の頭脳までが、なぜに戦争に突入したの
か。これまでの歴史書と違うのは、加藤さんが、その時代の中に身を置いて、歴史の渦中で考えようとしている姿勢が感じられたからだと思う。こういう角度の
近現代史への迫り方は貴重なものだ。朝鮮半島をめぐっての日清戦争、それを経て朝鮮半島をめぐる日露戦争。そして韓国併合、ついには対華21カ条要求。世
界の中へ入って行こうとする日本、しだいに起きる日本への世界の警戒、パリ講和会議・ヴェルサイユ条約・国際連盟・・・・・・。そして満州事変と日中戦
争、その間のいくつかの見誤り――。加藤さんは、その中の人物の心象風景をもていねいに追いつつ語る。人は時代の中に結局、生きてしまうものだが、バラン
スある信念を放棄してはならない。
中勘助(明治18年生まれ)27歳の作品。東京朝日新聞に漱石の「行人」中断のあと大正2年4月8日から6月4日まで連載され、後編も大正4年に連載され
る。明治20年代の東京歳時記ともいえる四季、人の交わり、淡い恋心を、虚弱で鋭敏な感性をもった主人公が、子供の頃の記憶をたどる形で、儚くかつ清冽に
きれいに描き出す。
最近、あっちこっちで、中勘助の「銀の匙」を耳にする。読んだのはおそらく学生時代以来だと思う。
お嬢様刑事が担当する難事件を、頭脳明晰、毒舌家の執事がいとも簡単に解決してしまうユーモアミステリーの短編集。第8回本屋大賞のベストセラー。
高橋源一郎さんの「さようなら、ギャングたち」は1981年だというから、もう30年。注目していた。内田樹さんは、「下流志向」「街場の教育論」「日本辺境論」から「街場のメディア論」まで、かなり読んできた。
し かし、「縮んでいく日本」「静かな日本」「人口の減る日本」「縮みながらも文化的に暮らせて、自尊感情が維持できて、国際社会の中でできる範囲で立派な役 割を果たせる国になれれば、それで上等じゃない? なのに、相変わらず"右肩上がり"だ」――世界に先駆けて、日本が示せるものを、情理を尽くして熱く語る政治家が望まれている、と言う。
昨年12月発刊の書。河田さんは復興構想会議のメンバー。活躍が更に期待されるが、京大土木の1学年後輩にあたるようだ。東日本大震災に襲われ、首都直下、東海・東南海・南海地震に備えなければならない今、「津波」を余すところなく語る本書は必読。
「減災社会を築く」「避難すれば助かる」「それには津波の知識の絶対量を増やす」という河田さんの思いが伝わってくる。