20110419-book.JPG東日本大震災における東電福島第一原発事故――。緊急停止時における3つの命綱。それは(1)制御棒(2)緊急炉心冷却装置(3)非常用ディーゼル発電機 だが、(3)が稼動せず、冷却系統が機能しない。この重大な事態は、文明自体を、エネルギー政策全体を、更には科学技術と哲学、人生とは、生老病死とはと いう実存的な問いかけを発している。

著者は、いたずらに恐怖心を抱くのではなく、基本的な知識を身につけ、情報を冷静に判断せよという。きわめてわかりやすく、具体的に語っている。


20110415-book.JPG  事件の影響力が他に比べて格段に大きく、しかも大きさだけでなくその影響力が歴史のなかに影を落としているという事件を七つ。そしてその核となっている人 物。日本にその都度巻き起こる世論の激高。赤穂浪士に象徴される「動機至純論」。生まれる事件は時代とかけ離れたものではなく、しかも事件によってその空 気がふくれあがり、空気を固め、新たな空気をつくり出す。保阪さんは、昭和の七大事件の因と果を端的に示す。見事だ。

事件と人物を並べると「5・ 15事件(橘孝三郎)」「2・26事件(磯部浅一)」「太平洋戦争と"誤謬の東條首相"と閣僚」「占領初期の大事件・日本国憲法制定(天皇の位置づけと9 条における官僚)」「60年安保(樺美智子)」「三島事件」「ロッキード事件(田中角栄)」――いずれも時代を画す影響力を及ぼした事象・人物だ。
  政治経済の閉塞感、日本沈没の不安のなかで起きた今回の東日本大震災。人為の事件ではないが、人々の意識は相当変化している。文明自体に、人の生老病死に、哲学的・宗教的に。


20110412-book.JPG  トルストイに初めて会った日本人。ただ一人、その葬儀にも参加した日本人。トルストイと語らい、中国の老子を共訳し、「老子道徳経」を著した小西増太郎 が、トルストイ没後25周年の追悼として1936年に書き上げたのが「トルストイを語る」だ。この著作を昨年2010年、トルストイ没後百年記念出版とし て再編版したのが本書だ。

  実に面白い。トルストイの貫禄、人格、感情、その息づかいが小西増太郎によって生々しく描かれている。美文家トルストイが、哲学・思想・宗教家として前人未到の境地への進み、妥協を許さず生きていく様が巨大な巌となって迫ってくる。すさまじい緊張感が伝わってくる。
 「近 頃、日本がしきりに欧米文化の粕をあさっているのを知って、あまりいい気持ちがしない。古い古い二千年の歴史ある日本の文明をふり棄てて、欧米の文明をと り入れようとするのは、その取捨によほど注意を要します。・・・・・・」「キリスト以前にキリストなくキリスト以後にキリストはない。他の賢人、賢者の教 えには見ることのできない感化力が強く、実現力に富んでいて、私たちを霊的に更生させる」「孔子は中庸主義の政治哲学者であったから、いつも世と共に上下 されたが、老子は純粋な哲学者であったから、政治なんかは眼中になかった」「老子ともあろうものが、『巳むを得ずして・・・・・・』などとはいう道理がな い。考えられない・・・・・・。そうした手ぬるいことでは、目的は達成できない」・・・・・・・。とにかく本書の行間にもトルストイ思想は息づいている。 家出についても、小西の見解が示される。アレキサンドラ嬢もすごい。


20110401-book.JPG 連続TVドラマ第1回を観て、思わず一気に読んだ。「新参者」など東野さんの最近の作品は、人情味や柔らかさがにじみ出ているが、10年程前のこの作品 は、ゴツゴツして力技(ちからわざ)を感じる。若かったからかもしれない。「暗い夜の中にこそ、お互いが本性をさらけだしたはずだ。しかし彼女のほうは誰 にも本当の顔を見せていなかったことになる。俺が彼女と過ごした夜は、全部幻だったのか」――それが幻夜。謎の正体不明の悪女新海美冬と、翻弄される水原 雅也たち。阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件を背景として描かれている。


20110329-book.JPG  「自分と闘って負けない心」と副題にある。

 どう決断して1手を打つか。羽生さんは3つのことを駆使して対局にのぞんでいるという。1つは「直感」、そして「読み」、もう1つが「大局観」。
「直感」と「ひらめき」は違う。「直感」は、蓄積のなかから経験則によって選択するもの。つまり研鑽を積んだもののみにある。「読み」は、ロジカルに考えて判断を積み上げ、戦略を見つける作業。
「大 局観」は、具体的手順を考えるのではない、パッとその局面を見て、今の状況はどうか、どうすべきか、攻めるか守るか、長期戦の勝負に出るか、そうしたもの の判断だという。経験を積むことによって磨かれ、その人の本質的な性格や考え方自体が反映する。棋士にとって「読む力」は若いときが上だが、年齢を重ね、 経験をへて「大局観」を身につけ、逆にいかに「読まないか」の心境になるという。面白い言い方だし、よくわかる。
  リスクをとらないと棋士の成長は止まる。「今日勝つ確率が最も高い戦法は、3年もたてば完全に時代遅れになる」ともいうが、そんなスピードで将棋の世界が 進んでいくものかと驚く。とぎすまされた、研鑽の持続――勝負の極意を開示してくれるが、将棋を越えた深い人間学の世界だ。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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