「景気が悪いのになぜ円高か、それも超円高か」――誰しもそう思っている。それは日本のデフレによって生じたもの。デフレと超円高の負の効果が本格化
し、雇用を直撃し、国力を削ぎ落とす。日本はこれまで、こうした危機に原油価格が低落するなど、"神風"が吹いて救われた。しかし、今、新興国経済の好調
やエコカー、エコポイントなどが剥落すると、もうむき出しの危機だ。
中野孝次さんの既刊4冊のなかから「老年の良識」として再構成したもの。高齢社会が本格化するなかで、こうした本は今、ブームでもあるが、人間・人生に対する中野さんの洞察は深い。「欲
望の充足が幸福ではない。欲望は充たせばますます渇(かつ)え、さらに肥大する病である。死を自覚し、死をすぐそこに控えて、今ここに自分が生きているこ
とを掴むこと、それが幸福なのだ」「閑暇がたくさんあるというのは、老年の最高の贅沢、天の恵みだ。何をしてもよく、何をしなくともよいというくらい、人
間の生涯で恵まれた状態はあるまい」「身心永閑こそが老年の幸福だ」「人、死を憎まば、生を愛すべし。存命の喜び、日々に楽しまざらんや(徒然草)」「人
の命は我にあり、天にあらず(養生訓 貝原益軒)」
荀子は孟子の生きた比較的安定した時代よりも抗争厳しき戦国時代。儒家の伝統の中に位置するが、天を重視したり、依存する思想とは異なりをみせる。天を
思慕して手をこまねいているよりは、人間的な能力、集団的組織力の発揮をも重視し、それゆえに規律・秩序たる礼義を唱える。「天人分離」の思想だ。
生まれてからずっと不況だった世代を「不況ネイティブ」と呼ぶならば、若者は「デジタルネイティブ」でもあるという。バブル崩壊、就職氷河期、ゆとり教育
の中で生きてきた今の若者。かつての「いい会社に就職」「バリバリ働いて高給をとる」「エリートになる」が当たり前ならば、(かつての世代からすれば)不
幸ということになる。しかし、今の若者はもう違う。最初から「大手企業に就職して・・・・・・」などという意識をもっていない。とくに女性はそうだと福嶋
さんはいう。
「上り坂の儒家、下り坂の老壮」という。孔子は難しいこの世を価値ある目標を定めて努力する立場だが、老壮思想は違う。田口さんが論語の一言、老子の無言
というとおりだ。言葉を絶対視しないで実感による体得を重視する。欲にとらわれれば、果てしなき渇望の世界にからめとられる。見えない、聞こえない世界、
その深さを我を離れて感得するところ、道が見える。「絶対自由の境地」、「名人・達人の領域」に悟入する。
現代社会にあって最も深刻なのは、哲学が不在であることだ。とくに政治家に。