sosikito.jpg「人間関係を支配する『ダンバー数』のすごい力」が副題。「管理できる人間関係の上限は150人である(ダンバー数)ーー霊長類学者のロビン・ダンバーによる大きな集団で暮らす霊長類の種ほど脳が大きいという発見に基づき、これに経済学者が加わって、人間の組織の規模とリーダーシップを検証したユニークな著作。

「組織の規模」――。ヒトの脳の大きさからくる最適なグループサイズは150人。世界中のあらゆる場所に見られる私的社会的ネットワークの典型的なサイズを示すダンバー・グラフ。5(最も親密な友人の数、迅速に決断を下す最適な人数)、それから3倍ずつして、15(親友、多様な情報源とアイディアに恵まれるシンパシー集団)50(良好な関係の友人、あなたの主な社会的サークル)150(友人)、そして500(知り合い)を示す。実感にもあった数字だ。現代の軍隊組織も「3倍の法則」に従っている。5人、15人、50人、150(ダンバー数)が詳細に語られる。企業でも150人を超えると、グループの分裂が始まり、「私たち」が「我ら、彼ら」になるという大きな変化が現れると言う。

組織における「帰属意識」――。「友情の7本柱」が紹介される。「言語(方言が望ましい)」「生まれ育った土地」「教育とキャリア上の経験(医療関係者や法曹関係者を見ればわかる)」「趣味と興味」「世界観(道徳、宗教、政治に関わる考え方の総体)」「ユーモアのセンス」「音楽の好み」の7つだ。道徳・政治・宗教がかなり友情の柱となるが、ユーモアのセンスというのが面白い。これらが組織作りに活用される。帰属意識を固めるために、企業組織でロゴや儀式、起業の物語、ラグビーチームなどのルーティーンがある。ヒトは、血縁や帰属の感覚を渇望するし、それが長期にわたる繁栄と幸福の礎石でもある。それを工夫するのも、リーダーの重要な仕事となる。

組織における「絆づくり」――。組織のメンバーが集まる時間を意識的につくることが重要。食事をする、お酒を飲む、一緒に散歩する、笑う、話題の共有、同調性のある活動を行うことだ。友情を形成する時間と空間をつくる。サルの毛づくろいは、ノミ取りではなくエンドルフィンと呼ばれる化学物質(脳内の麻酔性鎮痛薬)が脳内に放出される。一緒にダンスをし、ジョギングし、笑うのは、固い絆の形成につながる。

組織におけるコミュニケーション、「メディアとメッセージ」――。発せられたメッセージより受け取られたメッセージが重要だ。発言はほとんどが言葉自体でなく、言葉以外の信号(声の調子、表情、強調など)によって伝えられる。その工夫が大事だ。「物語」は非常に強力なツールであることを知っておこう。

「信頼の深さ」――。信頼しあえる環境は、ギブ・アンド・テイクと弱みを見せる覚悟によって整う。集団の中にいる「フリーライダー(たかり、乗っ取り)を発見し、また「ダークトライアド」(ナルシシズム、マキャベリズム、サイコパシー)の人格特性を持つ人を見分けることも重要。彼らの悪影響は破壊的だからだ。

「社会的空間、社会的時間」――。物理的環境(空間、採光、間取り、位置)が、人の健康や幸福と創造性に与える影響力を決して侮ってはいけない。

常識的に思ってきたことが、進化心理学による科学的組織論として丁寧に研究、論述されている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

太田あきひろホームページへ

カテゴリ一覧

最新記事一覧

月別アーカイブ

上へ