minaminoharu.jpg大阪の繁華街ミナミを舞台に、痛みや後悔、愛憎を抱えながら乗り越えようとする男女、親子の温かさが描かれる。いかにも大阪を感じさせるド庶民の人情の機微がとても魅力的。中心となるのは、姉妹の漫才師「カサブランカ」のチョーコとハナコ。笑いと涙が交錯する6つの連作小編。

「松虫通のファミリア」――。妻を亡くした吾郎は、娘の春美を妻の願ったピアニストにしようと懸命に育てるが、チョーコに憧れ漫才師になると出て行ってしまう。ハルミとヒデヨシの漫才コンビ「はんだごて」はスベりまくって空回り、逆に見捨てられていく。「大げさな身振り手振りでアピールすればするほど、客席は冷めていった」――なんだか今の政治の難しさを考えてしまう。1995年、阪神淡路大震災で春美は亡くなり、5歳になる孫の存在を、元相方のヒデヨシから知らされる。「閑古錐」――先が丸くなって使えなくなった錐。しかしそれは円熟。若いうちが全てではない、歳をとってできるようになることもある。

「道具屋筋の旅立ち」――優美の恋人は学生の誠。学祭の「大食い」に出てくれと優美に頼む。誠は大食いの「カサブランカ」のハナコの大ファン。子供の頃激太りしていた優美を罵倒していたくせに・・・・・・。「八角磨盤空裏走(はっかくのまばん、くうりにはしる)」――ありえないことが起きる。

「アモーレ相合橋」――。杉本昭彦が作曲した「アモーレ相合橋」を柿原登が歌って大ヒット。その1曲のみで足を洗った昭彦は今は模型作家。柿原は事業にも失敗。借金だらけのなか死ぬ。売れない歌手ちづると一緒に住んだ昭彦は、やっと会心の1曲「千羽鶴に乗って」を作曲してちづるに送ろうとしたが、そんな時、柿原が来て・・・・・・。「壺中日月長し」――涙なしには読めない感動的な話。

「道頓堀ーズ・エンジェル」――。ガンの告知を受けた夫の隠し子疑惑が発覚し衝撃を受けている女・橋本喜佐、結婚詐欺に遭って一千万円盗られた女・田島都、彼氏に捨てられて絶望している女・西本サエ。「男運のない女」がたまたま出会い明け方までしゃべる。チョーコに八つ当たり。

「黒門市場のタコ」――。翼の母の再婚した相手は船場の福永耳鼻科医院の2代目。父は人も羨むほど大事にしてくれるが、翼は苦しくなる。チョーコも父親から過保護、過干渉で苦しみ、一方で妹のハナコは「毎日寂しくて、惨めで・・・・・・お父ちゃんとチョーコを恨んだ」と言う。翼は会いに行くと、ハナコは「一笑すれば千山青し」ととりあえず笑うことを勧める。チョーコは「親は愛情で子供を壊せる」「自分を助けられるのは、自分だけや」「あんたはうちみたいにならんようにしい」と言う。

「ミナミの春、万国の春」――。2025年、万博の春にハルミの娘・彩は結婚を決める。ヒデヨシとハルミの「はんだごて」は、誰よりも「カサブランカ」のチョーコ・ハナコに憧れた。その王道漫才に。結婚式にサプライズがプレゼントされる。

「才能のない人間は、素直に流行に乗ればよかったのだ。MANZAIブームで生まれた有象無象の芸人たちのように、くだらないプライドなど放り捨てて、まずはウケることだけを考えればよかった。だが、ニ人とも間違えた。『はんだごて』は『カサブランカ』のように、王道の漫才で頂点を取るのだ。自分たちならできる、と」・・・・・・。王道を歩む漫才師、芸術家、政治家、そして人生道とは・・・・・・。大阪の繁華街ミナミを舞台にした「浪花節だよ、人生は」の傑作。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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