地方紙に連載されたエッセイ56 話。「効果抜群! 痛いところに貼ってください アガワ流 心の湿布薬」と帯にあるが、本当にその通り。日常のふとしたことを実に柔らかく、温かく、ユーモラスに描いている。各話ごとにイラストがあるが、阿川さん自身の絵。これが何とも言えなくいい。
「そこで私は決めた。『今日はまあ、だいたいこんなもんかな』----もはや、このモットーにも年季が入ってきた。考えてみれば、私の人生は『だいたいしあわせ』だったと、ありがたく思うのである」「誰もが多面的な性格を、出したり引っ込めたりして歳を重ねていく。だからおもしろい。自分の見知ったほんの一部だけで『こういう人だ』と思い込むと、あるいは『自分はこういう性格なんです』と決めつけると、人生はつまらなくなる。だから私も『だいたい』と『きちんと』を行ったり来たりしている」・・・・・・。
猫の話、犬の話、メダカを飼った話・・・・・・。動物は、本当に家族だ。能登半島地震で避難所の方々と餃子を作ったり、金沢で自らのトーク&ライヴ----。力まずできるところが素晴らしい。
「毎夏どんどん暑くなっていく」――確かに昔学校にはエアコンなどなかったし、「数年前まで、もっぱら節電を呼びかけていた」「近ごろは、夜中はずっとエアコンをつけっぱなしで寝てください」とテレビでも言ってる。「電子化不安」――レストランでも、タブレットの画面を出されるし、便利だが、「難儀な場面が増えていくことに恐怖を覚える」と言う。阿川さんまでそう言うんだと、何故かちょっと安心したりする。
「父と耳かき」――。高校時代から耳かきが欠かせず、大学受験の時も試験場に耳かきを持って行った私としては、してやったりと思ったほどの話だった。耳かき話なら、山ほどある。「しゃっくりのいろは」――。「『いろはにほへと』をゆっくり唱えてごらんなさい。まず大きく息を吸って『いーーーーーー』」。初めて聞いた。
あのインテリの阿川さんが、ぶつかったり、転んだり、慌てたり、不安になったり・・・・・・。面白い。人間って誰でもそういうものかも。