tonarino.jpg「陰謀論が、現実社会に及ぼす影響がどんどん無視できないものになってきた」「陰謀論の虜になる人が少しずつ増えている」「政治家が『みんな悪党』で『私腹を肥やす』連中だという発想も陰謀論的思考」と言い、「人々の中に昔からあった素朴な陰謀論的思考はネットの中で純化され、濃度を高め、より過激なものへと変異を遂げてきた」「陰謀論は私たちのすぐ『となり』にある」と言う。「悪者探し」と「悪者に仕立て上げる」は昔からあったものだが、このネット社会は「陰謀に満ちた荒れた言論空間」を増強させている。

「陰謀と陰謀論の違い」――。「陰謀」とは、現実に計画、実行された悪巧みのこと。「陰謀論」とは、世の中の出来事が全て誰かによって仕組まれた陰謀であるかのように、不確かな根拠をもとに、決めつける考え方のこと。「愚かな人間が陰謀論を信じるというよりも、むしろ賢い人間ほど出来事の裏側に隠れているものを暴き出そうとして、陰謀論を信じてしまうカラクリがある」と言う。そして二つの原因を指摘する。一つは「この世界をシンプルに解釈したい」という欲望。もう一つは「何か大事なものを『奪われる』」という感覚。これが絡み合って陰謀論を誘発すると言うのだ。

さらに、インターネットが陰謀論の世界を変えた。噂のラーメン店の行列、ネットの炎上などが起きる「集合行動の地殻変動」だ。アメリカのQアノン、日本の〇〇チャンネルなど、噂やフェイクは日常化しすぐ集まり集合的沸騰する。トランプの1.6連邦議会議事堂襲撃事件、MAGAもその類いだ。

タイパ・コスパにシンプル化が加わる時代は誠に厄介な時代と言える。陰謀論の温床となるもの――。「強い剥奪感と被害者意識」「剥奪感にとらわれたヒルベリーたちの中に育ったニヒリズムという化け物は、陰謀論を貪りながら肥大化していった」「格差が拡大し、アメリカン・ドリームは多くの人にとって絵空事のようになった」ーーそして「『あたかも』自分が地球を滅ぼす悪の組織と戦う戦隊ヒーローになったような気分」になったり「山田昌弘氏が言う『生きる希望をアニメやゲームや推し活などのバーチャルな活動から得ようとする」ことになる。さらにポピュリズムは「民の声」を錦の御旗に掲げ暴走するようになる。「本書が強く関心を寄せる陰謀論政治も純度の高いポピュリズムの産物だ」と指摘する。

本書は、トランプの不正選挙陰謀論、ナチスのユダヤ陰謀論、フリーメイソンなど多くの実例を分析する。日本の「諸悪の根源は〇〇だ」と攻撃する強い怒りと剥奪感を持った人々の強い怒りを例示する。

そして「陰謀論は非常識な『彼ら/彼女ら』の問題ではなく、現代を生きる『われわれ』自身の問題であることに気づくことが『陰謀論が支配する社会』という最悪のシナリオを回避するための肝心な一歩だと思う」と言う。「奪われている」という剥奪感をどう受け止めるか。難しいデジタル・ポピュリズム時代に遭遇している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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