「悪意のSNS戦略」が副題。「ロシアや中国を中心とした権威主義国家による、日本を始めする西側諸国への工作は、ハッキングのようなサイバー・ネットワークを通じたものだけではなく、我々が普段から触れているSNSを通じた宣伝戦のような形で行われている。認知戦とは、相手の認知領域、つまり思考や感情などの心理的な部分を揺さぶって、行動を情報操作によって変化させようとする戦いの形のことである」「本書で明かされるのは、主に民主国家に対して平時から行われている『影響力工作』や『認知戦』『ソフト戦』と呼ばれているものの実態である」・・・・・・。著者はイスラエル軍に入隊し、諜報部員として「心理戦」「経済戦」「サイバー戦」など様々な作戦に従事。世界に広がる「悪意のSNS戦略」「認知戦」「影響力工作」の実態と工作の手口、その対抗策を示している。
「ルーマニア大統領選で、ロシアが影響力工作(憲法裁判所が選挙無効と判断)」「ディスインフォメーションの3つの領域(影響力工作、虚偽情報などディスインフォメーション、詐欺・フィッシング行為)」「中ロが拡散した『汚染水』」「日本人への憎しみを喚起する作戦」「沖縄での影響力工作」「イスラエルは認知戦で負け続けている」など具体的事例を挙げ警告する。
著者自身の「イスラエル軍の『経済戦争プロジェクト』の責任者に」「イランの核武装を防ぐために、モサドが行った秘密工作」・・・・・・。
そして「中国が行っている影響力工作(悪い日本のイメージ、電気自動車の自動車業界でもキャンペーン)」「ロシアが行った影響力工作(ウクライナ、原発反対運動、第三世界の政権転覆工作)」などを例示する。
そこで、「認知戦への対抗措置」を示す。まず「影響力工作への対抗を可能にする法整備」。法律が整備されなければ動けない。次に「データ収集及び分析」――Xの改悪。「いいね」が非公開となり分析能力が落ちた。偽ユーザーがボットかどうかを見分けることも重要。そして「敵を潰す」の手順で行う。
そこでどう対処するか。「テイクダウン(フェイクユーザーを見つけアカウントを削除させる)」「大量通報して『シャドウバン』(他の人々とグループを作って報告する)」「暴露(影響力工作の実態やユーザーを公表)」「攻撃者に心理戦を仕掛ける」「カウンター・オペレーション(積極的にこちらも影響力工作を用いて反撃)」「ハッシュタグ・クリーニング(こちらも同じハッシュタグを使い、ボットを活用し、ポジティブメッセージを注入する)」の6つを示している。
日本は影響力工作が行われているにかかわらず、気づいていない。「戦いが始まる前に負けてしまっている。そのことを自覚し、一刻も早く準備を始めよう」「日本は『マインドセット』の入れ替えを」と著者・訳者が強く警告する。
