地域密着型の精神科病院・富士見ウエスト病院にある「SOGI支援外来」。セクシュアルマイノリティの「からだ」と「こころ」の不調をケアするこの「SOGI支援外来」には、フレンドリーな医師として名高い海野彩乃がおり、各地から様々な患者が集まってくる。外来の多くは、性別に違和感を覚えている人、出生時に割り当てられた性別に強い嫌悪感があって悩み苦しんでいる人など。今は「性同一性障害」とは呼ばず、「性別不合」「性別違和」と改称される。もちろん病気や障害ではない。医師・看護師と生きづらさを抱える患者とのやりとり、それぞれの「在り方」を見つめる医療連作集。想像を超えた「辛さ」が心に迫る。そして、寄り添う医師たちの温かさ、専門性が伝わる。
休職明けの看護師・倉木透子が配属になった第7病棟は、ストレスケアの治療を中心に行っている。担当する入院患者は10代のXジェンダー。Xジェンダーには、男女の中間地点にいる「中性」など「両性」「無性」「不定性」の4つのカテゴリーがあるが、小竹杏奈さんは、男女の中間にいたい性自認を持っている中性のXジェンダー。「頬に伝う涙を拭っていた。『・・・・・・僕にとっては、この性が自然なだけなのに』」・・・・・・。
尾形佳奈、38歳、アルコール依存症。パニック発作を軽減させる対処法のひとつが飲酒だった。セクシュアルマイノリティ。
山口佑樹、急性一過性精神病性障害。「一角獣に殺される」「小さなUFOが自室を飛び回る」「出生時に割り当てられた性と実感するジェンダーが一致していない」「マジでエグいっすよね? 性別を変更したいなら、手術しろだなんて」・・・・・・。兄が脳出血で言葉を失う。「脳出血を発症する前は、都内のジェンダー外来に通おうとしてたんで・・・・・・。今は無理だから・・・・・・せめて、海野先生に会いたいんだと」・・・・・・。これほどの厳しい現実が描かれ言葉を失う。
坂井真美、赤ちゃんの泣き声が引き金となって、フラッシュバックが起き自傷。「私、死にたいです」・・・・・・。「望まない妊娠だったとしても・・・・・・小さな命を手放して・・・・・・」。海野先生が言う。「生まれた命を第一に考えた末に、手放せた勇気を褒めて良いんだよ」と。
千田光一、十代の頃から強迫性障害。たえず、「誰かを傷つけたのではないか?」という加害恐怖が強く、そんな強迫観念に囚われて確認行為が止められなくなっていた。際限無く肥大化する加害恐怖。
こうした極限状況ともいえる人と場面が次々と描かれる。「カミングアウトするときは、不安と恐怖を抱いている当事者が多いと思う」――。想像を超えたSOGI支援医のカルテ。
