1772103128327.jpg「賃金・物価・金利のゆくえ」が副題。長い間、「賃金は上がらないものだ」「物価は上がらないものだ」「金利は上がらないものだ」という3つのノルムの慢性デフレに覆われていた日本だが、賃金・ 物価・金利が上がるインフレの時代が始まった。これまでの慢性デフレから一転したのは何故か。どうすれば、物価を上回る賃上げができるか。インフレ時代の日本経済の賃金、物価、金利、財政の最重要視点を提示する。

キーワードは、「賃上げ」と「インフレ予想」だろう。「グローバル化は世界の賃金と物価を下押し」「慢性デフレは、グローバル化の下での日本社会の選択であった」----2002年、経団連は「春闘の終焉」を宣言、連合はベースアップの統一要求を断念。賃上げは事実上停止し、賃金は毎年据え置かれることになる。購買力が伸びないので、企業は価格を上げることができず、賃金と物価が共に据え置かれる慢性デフレとなる。「グローバル化の下で雇用を守る選択(賃金据え置き)をしたのだ。

2013年からのアベノミクス----。3本の矢で経済再建を目指し、賃上げ率も高まり、株や有効求人倍率も上昇したが、現在のような人手不足は存在せず(女性と高齢者の労働参加率が高まった)、賃金上昇圧力がなかった。企業は利益を得たが内部留保をため賃金に反映しなかった。そして何よりもインフレ予想が現在に比べて明らかに低かった。2014年の消費税上げも、社会保障の財源とはいえ景気経済という点では水をさしたと私は思う。

2022年、コロナ禍が明けて経済が動き始めた。世界インフレの流入、ロシアのウクライナ侵攻による天然ガス、穀物の価格上昇、そして人手不足時代への突入などで、日本もいよいよインフレになるとの覚悟を決めたようだ。このインフレ予想の上昇は企業の価格支配力、価格メカニズムを復活させ、「賃金と物価の好循環」へ向けて動き始めている。「2022年春以降に起きているのは、賃金・物価・金利の正常化」であり、これは第一ステージだと言う。

そして、これからの第二ステージ----。それは「価格メカニズムの復活・正常化」「為替レートに、自国と外国の物価の影響を加味した『実質為替レート』の正常化(安いニッポンが正常化の原動力)」「政府債務の正常化(賃金・物価・金利の正常化によって、財政もようやく正常化に向かい始める)」だと指摘する。

そして「試算によればインフレ税収は180 兆円。これを大盤振る舞いするというのは愚の骨頂。正常化の流れにうまく乗れていない人々のために、この一部を使う。例えば物価上昇に賃金や年金受取額が追いつかない消費者や、賃上げの原資確保に苦しむ、中小企業経営者等への補助金など、適切な使い道を」と指摘。「こうした財政措置によって、2%経済への移行をより円滑にする効果が期待できる」と言う。「物価を上回る賃金上昇を」「財政支出をためらうな」「追加利上げは慎重に」と、賃金上昇を主眼に経済の好循環、価格メカニズムの復活を進めていくことだ。

「インフレと日銀」「インフレと賃上げ」「インフレと財政」「インフレの変動要因」の各章ともデータを緻密に踏まえ、理論的に濃密な分析が行われている。

長い慢性デフレのトンネルを抜け、物価高が連日騒がれるついに訪れたインフレ時代。政治がどうしてもポピュリズムに流され、かつSNS等による攻撃的な威勢の良い荒れた言論空間が跋扈するなか、物価研究の第一人者による丁寧な「賃金・物価・金利のゆくえ」の分析と提言は、極めて重要で意義深い。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

太田あきひろホームページへ

カテゴリ一覧

最新記事一覧

月別アーカイブ

上へ