「ウェルビーイングの経済学」が副題。経済成長を優先する社会から人間の幸福を重視する社会、ウェルビーイング社会をどう創るか。20世紀後半の世界は、経済成長とともに豊かさを求め、「福祉社会」への模索が行われたが、新自由主義が台頭、リーマンショックを経て、新たな成長戦略を競うようになっている。しかし、「GDPでは数値化できない『ゆたかな生』とは何か」「国が経済成長を希求し、モノは溢れていても、自然環境は破壊され、人々のつながりは希薄化し、社会はますます息苦しくなり、格差が拡大している」なかで、「GDPでは数値化できない『ゆたかな生』とは何か」を問いかける。それは成長至上主義を問い直し、「経済のための人間から、人間のための経済」に転換することだとその社会ビジョンを示している。それは「社会目標を経済成長から幸福度ヘ転換」(スティグリッツ)することだ。
データを示す。「一定以上の平均所得国では、平均所得と幸福度とは無関係になる(一定の閾値を超えると、幸福なるものは所得の多寡に還元されなくなる)」と言う。「ゆたかな富」は必ずしも「ゆたかな生」を意味しないのだ。
従来の資本主義社会は「市場」と「国家」の調整原理できたが(市場対国家の対立)、もう一つ「市民社会(コミュニティー)」という第3セクターを加えて考えることが必要、と言う。経済システム、政治システム、社会システムだ。この市民社会の領域で主役を成すのは互酬や協力を原理とする社会的連帯経済。協同組合、共済組合、非営利団体、財団・・・・・・。労働組合、宗教団体、文化・スポーツ団体、市民団体、クラブ・・・・・・。これらによる医療、教育、福祉、文化などは、「人間形成的」な活動であり、「カネによるカネの生産」ではなく「ヒトによるヒトの生産」であり「これからは『人間形成』が経済社会を主導する時代なのだ」と言う。
GDPに代わる「ウェルビーイングをどう測るか」――。UNDPの「人間開発指数(HDI)」は、平均寿命指数+教育指数+GDP指数。長寿と教育(特に識字率)だから先進国では高い。国連の「世界幸福度報告」は主観的幸福度(感)とその寄与要因で図る。OECDの「ベターライフ・インデックス(BLI)」は生活の質(健康状態、ワークライフ・バランス、教育と技能、生活の安全・・・・・・)、物質的生活条件(所得と資産、仕事と報酬、住居)、ウェルビーイングの時間的持続可能性(自然・経済・人的資本・・・・・・)で観察する。この「ゆたかさをどう測るか」はその思想の世界観が現れていることになる。
経済至上主義にかき消されていくのではなく、「ゆたかな生」「ウェルビーイング」を目指して進んでいく意思の強さが大事となっている。
