1768442386035(1).jpgこれまでの人生で「民度」という言葉を使ったことはおそらくない。「『市民』としての成熟度」「経済の成熟、生活の豊かさ、教育水準の高さ、道徳・倫理の高さ、文化・教養の深さ」などの総合的レベルをいうが、「民度が政治的な文脈で頻繁に用いられている実態があり、民度と政治の間には密接な関係がある」と言う。本書は、「民度概念の分析を通じて、日本の民主主義の現状と課題を明らかにする」を目的とする。

政治を取り巻く環境は、世界的なポピュリズムの跋扈と攻撃的なSNSによる慌ただしい言論空間の形成によって激変している。A I・デジタル社会の急進展は社会を劇的に変え、政治は翻弄されている。民主主義は危機にさらされ、日本では既成政党が苦戦を強いられ、左右の新興勢力が台頭する多党化時代に変貌している。それを担うのは、昔も今も国民そのもの。本書は「民度」という切り口で、民意の「現在地」を描き出すとしており、「分極化時代の日本の民主主義」が副題となっている。

民度の高低の判断基準は、「ルールの遵守」「マナーへの配慮」が高く、「協調・協力」「清潔さ」「素養・教養」「政治関心・参加」が続く。本書は「民度は政治的な性格を多分に含む概念」とし、「人々が持つ党派性によって、政治的属性の効果が大きく異なる実態」を明らかにしている。

「民度と投票率」――投票参加は参加コストの影響を強く受けている。昨今の政治家や政党による動員力の低下は、投票率を低下させているが、1990年代に行われた選挙制度改革が、意図せざる帰結して投票率の低下をもたらしている。民度ではない。

無党派層は1990年代の相次ぐ政党の離合集散によって急増した。「党派性と意思決定」については、「日本は政党に対する情緒的な結びつきが強い」傾向にあるが、「極端な形で党派性が意思決定を左右する事態に陥ることがある。適度な距離を保ちつつ、政党ないし自身の党派性とうまく付き合っていくことが肝要。のめり込むのではなく、自身の中でうまく党派性を操縦していく感覚を身に付ける必要がある」と言う。

若年層の投票率は相変わらず低い。政治関心は18歳選挙権でも変わらず、見た目で投票するなどと言われるが「若年層も政策に基づき判断している」ようだ。判断能力を高めることが大事だが、タイパ、コスパのSNS時代。更なる検討が急務だと思う。

民主主義を支える国民の総合的な判断力。「哲学不在の時代」などという言葉自体が消え、押し流される今、「民度」「人間の判断力」「人間力」をどう培うか。問いかける問題は、あまりにも大きい。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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