歴史家では語れない生々しい感情・主張の込められた濃密な書。安倍官邸で内閣官房副長官補、国家安全保障局次長として重要な役割を担った兼原氏と対中外交に人生を捧げてきた前中国大使の垂氏の日中近現代史。「日中は隣国同士。日中関係、米中関係を安定させ、台湾有事の勃発を防ぎ、アジアの平和と繁栄を守ることは、今世紀前半の日本の最す重要課題である」「近代以降の中国の歴史は、日本からの広範な影響抜きに語ることは考えられない。特に辛亥革命の主人公たちは、ほぼ全員が日本に滞在したり学んだりしており、その母体となった団体(中国同盟会)も東京で設立されているほどだ。----しかし、中国では、こうした日本からの広範な影響や交流の記憶は漂白され、自国中心主義のプロパガンダに置き換えられてしまっている」と言う。「日中の歴史を相互影響を与え合った一体のものとして見る」との視座だ。
「日清戦争と日露戦争」――。「海からの脅威に気づいた李鴻章」「三国干渉は李鴻章が仕組んだが、『なんでこんな島(台湾)に関心があるのか?』と言った」「日露戦争での日本の勝利と科挙廃止が同じタイミング(日本に学ベの機運)」「アジアの平等な連帯を目指した頭山満らの玄洋社(アジアの近代化、アジア主義)」・・・・・・。植民地が世界に広がる中でのアジア。戦後70年談話の冒頭に兼原氏が触れている(世界中の植民地支配は悪だった、と言い切っている)。
「孫文と袁世凱」――。「孫文、宋教仁らを支援したが、外交的資産になっていない。日本外交には昔から戦略的思考がない」と嘆く。「外交は表も裏も使う連立方程式(加賀の前田、真田家)、まさに戦略的思考」「正統政府と付き合うばかりが外交じゃない。動乱期には幅の広さを」と言う。
「盧溝橋事件が、中国共産党を救った」――。「戦う国民党、逃げまくる共産党」「蒋介石は抗日よりも共産党征伐を優先すべきだと行動していたが、盧溝橋事件で『抗日』を優先せざるを得なくなった」「日本の自滅が蒋介石を助けた」「日中戦争を『世界戦争』にした日本」・・・・・・。
そして戦後。大躍進政策の失敗、文革、米中国交正常化、日中国交正常化・・・・・・。そして「日本をモデルにした改革開放」を語る。さらに「戦略的互恵関係と尖閣問題」――。歴史的経過を流れの中から詳述する。緊迫の連続でもある。
「台湾有事よりも恐れるべき『平和的統一』」「香港の本当の問題は、民主化ではない」「習近平の中国」の各章で現在の課題を抽出している。「ここで求められるのは、過去の教訓を踏まえた戦略的思考だ。そうでないと日本は、米中という超大国の狭間で翻弄され続ける」「長期的戦略的視野を欠いた外交は、短期間で場当たり的な対応に終始することを、過去の歴史は静かに教えてくれている」と日本外交において欠如してきた戦略的思考の重要性を語っている。
