1776664252717.jpg「俺は蝦夷ヘ行く」――飛騨湯之島村の腕利きの杣(そま)武川久兵衛は蝦夷ヘ渡り、「飛騨屋」を興す。北の大地を切り拓いた「飛騨屋」四代、百年の物語。

飛騨国下呂で豊かな木に囲まれ、見事な檜を伐り出し管流しの技を身につけていた若き武川久兵衛。「木を伐るのも森の獣も獲るのも、杣の稼ぎは全て山からの授かりものだ。月に一度は皆で仕事を休んで、山神様を丁寧に祀り、山が荒れぬように決して欲をかかない。木も獣も、暮らしに欠かせぬ分だけを獲って後は守るというのが杣だ」「杣は伐っただけの苗を植えるから、山から木がなくなることはない」・・・・・・

しかし、将軍綱吉の時代――。突如として、飛騨の山は幕府に召し上げられ、天領とされてしまう。自由に木を伐ることができなくなり、一気に貧しくなった湯之島。「このまま湯之島におっても飢えるばっかりじゃ。俺は江戸で材木を商う」と久兵衛は江戸に向かう。

深川の材木商で働き、その才覚を認められた久兵衛。下北の南部藩大畑へ行って、造材を請け負ってこいと命じられる。元禄12(1699)、久兵衛と、弟の藤助は大畑へ向かい信頼を得る。さらに久兵衛は、広大な蝦夷を目指し、材木屋の「飛騨屋」を興す。そこは松前藩が仕切っていた。屋号があっても、近江商人たちに使われて杣をする下請けの材木屋で、「西蝦夷の隅を歩くだけ」の存在だったが、久兵衛たちは、「これまで他国の商人が足を踏み入れなかった東蝦夷を目指す」のだった。藩も手をつかねて放り出している地であり、その請負を目指したのだ。故郷から仲間を呼び寄せ、厳しい自然に立ち向かう久兵衛たち。自然と共に生きる夷仁(アイヌ)のトイタケたちの信を得て、広大な森を伐り拓いていく・・・・・・

久兵衛、妻となったさわ、弟・藤助とその妻・美津、京を任せる弟・伊右衛門と、その息子で久兵衛の養子となった武川久蔵、その妻・志保・・・・・・。互いに支え合い信を寄せる一族の結束は苦難を経るごとに強固になっていく。愛する幼な子の死、厳しい風雪、突如として襲う地震・津波・・・・・・

全てを乗り越え、飛騨屋は大きくなり、山々の地図を作り、湊を拓き、手船を手配した。そして久兵衛が死に、2代目久蔵がさらに発展させ倍にするが、その久蔵も死を迎える。

何があっても「気長に、慎重に」の飛騨の杣の精神、自然と人を大事にする精神、たじろがずどっしり前向きの強い心、家族愛と郷土愛・・・・・・。人間としての一筋の道が崇高なほど迫ってくる小説上巻。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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