気候変動や戦争に襲われ荒れ果てた未来の地球。生を脅かされ難民が地表に溢れる一方、富裕層の多くは精神を仮想空間に移し、疑似的な不死を確保していた。そうしたなか、穏やかな湖畔の楽園・ ヘヴンスガーデンが開設されていた。疑似的な不死を望まない者を受け入れ、本物の死を与えるとともに、彼らの望む理想的な最期の時間を提供し、その遺産を寄付させ、難民保護に充てるというのがこの施設だ。
ここで働く元難民のエルムはコーディネーターとして寄付者の「旅立ち」に寄り添う毎日を送る。施設の創設者は「三毛猫」の姿になっており、地球を人の住めないものにした自責や後悔、生きること自体に絶望した人たちを受け入れるが、様々な人の生き様と死を見つめていくことになる。
ここに来た物理学の地平を変える高次元重力理論を探求した天才物理学者リゲルは、結果として核爆発以上の恐るべき死者を出す事件を起こした人物。「わたしは人類が太陽系を出ることを疑っていなかった。地球では、原子を組み換えあらゆるものを生み出せるようになり、貧困がなくなると思っていた。実際に起きたのは、熱波に干ばつ、大洪水、戦争と飢餓と破滅的な事故。科学はただ、富裕層が物質世界から無責任な脱出をするのを助けただけでした。わたしの情熱はここで役割を終えます。変化するためには死なねばならない」と言う。
また大富豪のローズは花園に飛び降り死を迎えたいと言う。ガーデンを訪れた元難民のリンクスは、「世界を壊すだけ壊しておいて、自分たちだけ安全な『もうひとつの世界』に避難するなんてあんまりだ」とオルターワールドの名を聞いたとたんに怒り、エルムと心をかよわせ、ローズを迎える。
絶望的な地球----。その中で生きるか、死ぬか。生きるのが幸せか、死ぬのが幸せか。どういう形で死を迎えたらいいのか。バーチャルの中での不死とは何か、そして幸せなのか。生死をプログラミングして樹木として生きるか、「三毛猫」のように生きるか。創設者「三毛猫」は、「いまや絶望だけが、救うべき命を淡々と救う」と言う。
人類のディストピアの未来の中での生き方の選択・・・・・・。「この星の悲しみをため込んだ湖は、ゆっくりゆっくりと水位を上げてゆく。そして、いつかわたしの足跡を消し、倒れたわたしを抱き寄せるだろう。その時、わたしは湖の一部になる。これまで経験されたすべての悲しみ、これから生まれる体に宿るすべての悲しみたちと結ばれ、この孤独は終わる」と結んでいる。
