東野圭吾さんの遺作となった。意識して書いたとしか思えない。最後に草薙は、「それらを全部足した数だけ、人の生死に関する秘密を暴いてきたことになる。それが刑事の義務だと思っていたし・・・・・・だけど、俺が秘密を暴いたことで、きっと傷ついた人もいる。知りたくなかったことを知ってしまったと、警察を恨んだ人も少なくないはずだ。・・・・・・俺が、刑事としての終活をするに当たり、一度ぐらいは、仕方のないこと、と真相を呑み込んでもいいんじゃないかと思う」と言う。そして湯川は、「俺たちは、ずいぶんとたくさんの秘密を暴いてきた。そのためには、人々の感情など無視したし、君はともかく、僕などは最初からそんなものに興味がなかった。そんな僕に人の心も科学だと教えてくれたのが、あの事件だ。未だに答えを出せずにいる・・・・・・我々はあの事件について、真実を解き明かしていなかった。石神は、確かに人を殺した。では、その人物はどこの誰で、それまでどうやって生きてきて、なぜあの日、あの場所に行ったのか。それらを知らないままでは、真の解決とはいえなかった。でも、ついに答えに辿り着いた」と言う。代表作「容疑者Xの献身」の鮮やかで悲しい解決で、湯川がずっと心に抱いてきた強いわだかまりと疑念と悔恨。その蓋を開ける事件が今回起きたのだ。
スーパーで買い物中の刑事・内海薫が刺された。犯人は70歳ほどの老人・三崎茂久。薫の全く知らない男だ。男は階段を駆け上がり屋上から飛び降り自殺を図るが一命を取り留める。逮捕されるが黙秘が続く。湯川の冴え渡る推理で、内海に恨みを抱く若い女性・藤村紗穂が捜査線上に浮かぶ。19歳のスーパー店員だ。老人との関係は不明。
6年前、大型量販店の駐車場内で男性の絞殺死体が見つかった。特捜本部は、妻の藤村倫子を逮捕、動機は夫の娘へのおぞましい性加害。周到に妻と娘はアリバイ工作をしたが、それを崩したのが内海薫らだった。しかし、藤村凛子は獄中で自殺する。刺された薫と藤村紗穂は直接対決・・・・・・。恨みは、感情的にもより深くなり、より恐るべき復讐が・・・・・・。「復讐というのは何? いつ始まったの」・・・・・・。
一方、湯川と草薙は、三崎茂久の"ある持ち物"を手がかりに、「20年間、解けなかった謎」の扉を開く。三崎には香苗という娘がおり、事故死していた。三崎が藤村紗穂に自分の娘を重ね合わせて薫を刺したようだが、もう一つ、三崎には鶴巻和正という会社で同僚であった親友がいたことがわかる。厳しく辛い三崎と鶴巻の人生が絡み合う。そしてあの「容疑者Xの献身」の天才科学者・石神の考え抜いたトリックと結びついていくのだが・・・・・・。
東野圭吾さんの遺作。早すぎる。挿絵が時計と地球儀になっているのも、やけになんとも・・・・・・。
