1785915198561.jpg時は平安前期。藤原氏が伴氏(大伴氏)を追い落とした応天門の変の後。舞台は那ノ津(博多)、平戸、値嘉ノ浦(五島列島)から壱岐、対馬にかけての西海。金波銀波の裏には、海賊、商人、官人などが入り乱れての熾烈な生死をかけた戦いが繰り広げられていた。

海神の生贄となる巫女の少女・由良。由良が目撃した海賊に襲われた商人船から海に投げ出された巨大な櫃、その中にいた安曇福雄。多くの巫女を売り買いする巫女船の船長・赤名。船を襲い強奪することを生業とする島嶼の輩で高島の郷の頭目・宗継、年麻呂。西国九国ニ島の要・太宰府の少弍の在原安貞に仕える女官・伴真平、新しい少弍・元利麻呂。越智貞厚と新羅商人・王礼・・・・・・。海神の生贄を売る船が徘徊するとは尋常ではないが、新羅をはじめ通商が盛んに行われ、海賊が跋扈する荒々しい時代風景が生々しく描き出される。

そのなかで印象的なのは海、そして過酷な運命であるだけに貫かれる一筋の愛と忠誠心だ。「あー、そうか。不条理でままにならず、世の道理に合わぬあの船は海そのものだ。自分は、海のただ中に育ち、暮らしていたのだと、由良は唐突に理解した」「結局人の世では、不条理は柔らかな言葉や美しい衣で覆い隠され、目に見えづらいだけであった。それに比べれば、海の上は何もかもがむき出しで、善も悪も全てがごちゃまぜに刈り取られてゆくものであった。ならば、自分は偽りのない海を選ぶと由良は思った」・・・・・・。そして一筋の愛と忠誠心。高島の頭目・宗継のために体を張って生きる年麻呂。在原安貞にひたすら仕える真平。駆け落ちする香久女と僧の元昌。「年麻呂、真平、そして香久女。誰かを大切に思うあり方は、それぞれあまりに異なりすぎた。・・・・・・何かを願うとはこれほどに痛みを伴うものなのか。彼らのひたむきさが、強靭さが由良には恐ろしくすら思われた」・・・・・・

澤田瞳子作品の中では、今までと違った荒々しい世界、そして千変万化する海を描いた力作。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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