AI時代の生命線は「意思決定」にあり。「判断の主導権を、握り続けてください」――これが、A I時代の急所。「AIは膨大なデータから統計的に正解を導き出すことはできても、答えが立ち上がってくる場を生きることはできません。これこそが人間に残された決定的な役割です。そして日本文化は、何百年も前から、この生き方を継承してきました。武道の型として、茶道の一期一会として、ものづくり現場の暗黙知として、商人の場の差配として・・・・・・それを既に身体に持っています」と、一人の頭の中でなく、関係の中から答えが「自ずから」立ち上がってくる身体的知恵を持つ日本人にエールを送る。
「A I覇権戦争----それは国家レベルから個人レベルまで、あらゆるレベルの意思決定を支配する階層構造をめぐる争いだ。その構造を知らないことは、自分自身の意思決定を、知らぬ間にA I覇権を握る人たちに明け渡すことを意味する」と言う。A I派遣戦争の構造は、「AIアプリケーション層」の下に、「AIモデル層」「クラウド層」「物理基盤層」がある。AIサービスの裏側では、大量の計算資源が稼働、その計算を狙っているのは、高性能なGPU (画像処理半導体)であり、それらを束ねたデータセンターだが、それを動かすには膨大な電力が必要となる。半導体と電力にかかっている。この土台がクラウド層と物理基盤層だが、「この2つの土台は、驚くほど少数の企業に手に握られている」。世界のクラウドインフラ市場シェアは、AWSが約29%、Microsoft Azureが約20%、Google Cloudが約13%。物理基盤層では、データセンター向けGPU市場ではNVIDIAがなんと98%を占める。先端半導体製造シェアでは、TSMCが9割のシェアを占めている。半導体を設計する企業(ファブレス)と製造する企業(ファウンドリ)があるが、ファウンドリのシェアは、TSMCが53%、Samsungが17%。ここにラピダスなどが参入、半導体製造装置では東京エレクトロンが5強の一角を占め、「塗布現像装置」では世界の90%を占めると言う。また「材料」の製造では、日本企業が突出した存在感を放っていると言う。「日本企業は、製造装置と材料で重要な立ち位置を担っている」と紹介している。それに加えて、日本文化の「無限定環境の中で、関係を育みながら生きてきた日本の知が、今世界に必要とされている」と言うのだ。
A Iの進化は永遠に続くように感じられるが、そうではなく、「Epoch AIはその進化が長くは続かないことを定量的に指摘する」と言う。2027年から2028年の間に、最初の壁「データ枯渇問題」、これに追い打ちをかける生成AI自身による「データの汚染」問題が起きると言う。そして、「AIは、データ枯渇問題を皮切りに次々と限界をあらわにし、無限定環境への対応ができないという根本問題を残したまま、2030年前後に『頭打ち』を迎えることでしょう」と言うのだ。そして「どんなに優れた道具であっても、それを運用する人間が、進化・成長しない限りは、その潜在能力を活かしきることはできません」「AIを運用する側である私たち人間の役割と責任はますます大きくなる」と指摘する。
「AI格差より深刻な『能力形成力格差』 人間拡張のためのA I」――。既に「提案書の質は標準以上だが、その提案書を作った社員自身が自分の頭で考えていない」という現象が起きている。A Iは矛盾に弱く、人間はAIに容易に騙される。大事なことは「AIを利用する前に、人間が仮説を持っておくこと。『仮説立て』だ」。「仮説設計力」を鍛えることが大事になる。何をAIに任せ、AIを使い、自分の判断で結果を出すか。リーダーが自ら仮説を立て、AIとどう協働するか。A I時代を創った人々は、コンピュータは、人間の能力を「置き換える」ためのものではなく、人間の知性を「拡張する」ためのもの、思考のパートナーへと変えた。「AIをどう導入するかではなく、能力が形成され続ける環境をいかにして設計するか。この設計がないと、人と人、組織と組織の間に『能力形成力格差』が静かに広がる」と言う。
A I覇権戦争の現在地、そして楽観できない未来、そのなかでの人間の責任と価値がよくわかる。A Iと産業・企業・個人----キーワードは「意思決定」であることを鮮やかに浮かび上がらせる。
